上場企業479社の広報活動実態調査でわかった日本企業の広報力とその課題、ビジョンについて「8つの広報力」を切り口にレポートする。
戦略構築力に関する企業の広報活動実態 (戦略構築力の10設問から主要設問を抜粋)
回答した上場企業479社が戦略構築力関連で当てはまると回答した数をパーセンテージ表示している。星印は、専門家パネルが重要視した上位3項目(数字は順位)

戦略構築は後手に回りがち
企業広報戦略研究所では、広報活動における「戦略構築力」を①「経営課題に対応する広報戦略の構築」、②「ステークホルダー別の目標管理、見直しを組織的に実行する能力」と定義している。つまり、過去の連載で述べた「情報収集力」「情報分析力」のように情報を“知覚”するフェーズから一歩進み、収集し分析した情報をもとに、自社の経営課題や経営戦略に即し、あるいはステークホルダー別に広報戦略を“構築”していくフェーズを担っている。
今回の調査における戦略構築力ベスト3は、「広報戦略の経営戦略とのリンク」(49.5%)、「自社の強み、弱みを意識した広報戦略の策定」(37.0%)、「重点メディアごとの個別戦略の策定」(29.4%)の順であった。しかしながらベスト3であっても、半数を超す項目は一つもなく、戦略構築は各企業の広報にとって後手に回りがちな分野であることがわかる。
ただし、「戦略構築力」において専門家パネルが重要と指摘した4項目と、調査結果の上位4項目が同じ順位であったのは、企業の広報担当者と専門家の認識が一致することを意味している。特に、最もポイントの高かった「広報戦略の経営戦略とのリンク」は、冒頭の戦略構築力の定義①とも合致する重要な項目だ。リンクできていないと回答した約半数の企業には、特にこの項目の見直しをお勧めしたい。
「情報の創造」を実現するために
戦略構築においては、(2)「ステークホルダー別の目標管理、見直しを組織的に実行する能力」も ...