「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。
これまでの手法に限界広報戦略を進化させるには
Z世代が主要な消費者層として成長する中、広報戦略がどのように進化していくべきか注目されている。これまでのコミュニケーション手法、例えば、SNSを活用したバズマーケティングやインフルエンサーの起用など、ストーリーテリングによるエンゲージメントの強化は、これまでも一定の効果を発揮してきた。しかし、これらの手法にも限界が見え始めている。Z世代は企業の透明性や倫理的な行動、社会的責任を重視するため、広報担当者は新たな課題に直面している。本稿では、Z世代を対象にした企業コミュニケーションが抱える課題を掘り下げ、広報企画書に落とし込むための方法を考えていきたい。
視点1
透明性を基盤にした長期の信頼構築
Z世代の価値観を広報戦略に反映
これまでの企業コミュニケーション活動は、短期的なエンゲージメントを得るための感情的な訴求に重きを置いていた。しかし、それだけでは持続可能な信頼関係を構築することは難しいと私は考えている。Z世代は、表面的なアピールや瞬間的なバズに対して一時的な興味を示すものの、長期的な関心を維持していくためには、企業側との、実際の行動や社会的価値に基づいた深い関係性が必要である。単なるマーケティング視点を超え、Z世代独自の価値観や行動変容を反映した持続可能な広報戦略が求められている。
Z世代からの支持を得るためには、企業のメッセージや行動が一貫していて、社会的に意義があることが重要である。Z世代は、興味を持った企業やブランドをソーシャルメディアで積極的に拡散し、他者と「共有」することでさらなる支持者を引き込む。広報戦略がZ世代の価値観に合致していれば、単なる宣伝にとどまらず、自然とコミュニティ内に自社に関する話題が広がり、強固なブランド支持基盤を形成することができるものと考えられる。
Z世代調査①
価格が多少高くても、SDGsに貢献できるサービスを選ぶ
ジョイカルジャパンは2024年6月、「世代間におけるSDGsに関する意識調査」の結果を発表(調査対象は車を所有し週5日以上運転するZ世代111名ほか、Y世代、X世代、シニア世代)。「あなたは、SDGsに貢献できる車やサービスの価格が、他と比較して月額数百円程度高い場合であってもその商品を選びたいと思うか」という質問に対し、Z世代の8割が「そう思う」と回答。「そう思う」と回答した人に理由を聞くと「社会に悪い影響のある商品やサービスを購入することに罪悪感があるから」(58.3%)が最も多く、「環境や地域に良いことをしたいから」(41.7%)「社会問題や環境問題に危機感を持っているから」(38.1%)が続いた。また「話題性があるから」(23.8%)という意見もあり、これはシニア世代の5.7%と比較すると高い結果となった。
「共感疲れ」と一貫性への不信感
Z世代は企業のメッセージに対して敏感である一方、過剰な感情訴求に対してはすでに「疲れ」を感じ始めている。共感を基盤にしたメッセージが短期的に効果を上げることもあるが、表面的な訴求に終わると、逆に信頼を損なうリスクが高まる。企業が利益追求のためだけに共感を煽っていると感じた瞬間、Z世代は迅速に離れていくのだ。私が大学で学生と接する中でも、彼らがこうした表面上のキャンペーンや共感メッセージと距離を置き、本質的な価値に敏感であることを目の当たりにする。
企業がZ世代からの信頼を得るためには、メッセージの一貫性と行動の透明性を高めていくことが不可欠である。Z世代は、単に「言葉」でなく、企業が「実際にどのような行動を取っているか」、そしてその「成果がどのように持続可能な形で進展しているか」を重視している。
信頼を高めるための広報企画
広報企画書を作成する際には、こうした「透明性の確保」に向けた具体的な計画を盛り込んでいきたい。まず、進捗報告やデータ公開のタイムラインを明確にし、企業の行動が一貫していることを示すためのKPI(重要業績評価指標)を設定する。例えば、企業の社会貢献やサステナビリティの取り組みに対して、「定期的な進捗報告」を行うことでZ世代からの信頼を得ることができる。また、「フィードバック」の機会を積極的に設けたい。実際のユーザーの声を取り入れ、広報活動の改善に反映させることも有効である。透明性を基盤とした持続可能な広報戦略が、Z世代の信頼を構築し、長期的な関係性を築くことにつながるのである。
図1 広報企画書作成のポイント
Z世代との信頼構築のための3要素
①透明性の確保
KPIを設定し、進捗や行動の一貫性を測定可能にする。タイムラインを明確にして、自社が目標に向かってどのように行動しているかを示していくことで透明性を確保する。
②定期的な進捗報告
社会貢献やサステナビリティ活動など、Z世代が関心を持つ分野について、具体的な成果を定期的に報告する。ビジュアルを活用した分かりやすい報告などを効果的に行うことで透明性を高める。
②フィードバックの取り入れ
ユーザーからの意見を収集して、それを広報活動に反映させる。オンラインアンケートやSNSを活用したフィードバック収集の仕組みを整え、改善に反映することで、Z世代との双方向の信頼関係を築く。
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