「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。
新たな測定手法が求められている
広報活動の効果測定において、広告換算(AVE:Advertising Value Equivalency)は長年主要な指標として用いられてきた。しかし、デジタル時代の到来とともに、この手法の限界が明確になっている。単に広告価値を換算するだけでは、広報活動がビジネスに与える真の影響を十分に評価できないためである。広報担当者にとって、広告換算に頼らないメディア露出測定手法の導入は、現代の課題に適応する上で避けて通れない。
また、経営層やステークホルダーへ活動の成果を示すためにも、広告換算を超えた新たな測定手法を活用し、戦略的な広報企画書を作成することが求められている。
今回は、広告換算以外の手法でメディア露出を測定するためにはどのような手法が考えられるのか。そのための広報企画書の書き方について考えていきたい。
視点1
広告換算以外の手法の必要性
広告換算の限界
広告換算の最大の問題点は、露出量を単純に金額に換算するだけで、実際のビジネス成果やターゲット層への具体的な影響が不明確な点である。例えば、大規模なキャンペーンで高い広告換算額を達成しても、それがブランド認知度の向上や購買行動の促進にどれほど寄与したかを直接的に示すことは難しい。現代のメディア環境は多様化・複雑化しており、従来のマスメディアだけでなく、ウェブサイト、SNS、オンラインコミュニティなど、多岐にわたるチャネルが存在する。これらのデジタルメディアでの露出を適切に評価するには、広告換算では不十分であり、新たな測定手法が求められている。
広告換算は過去の遺物か?
広告換算は、広報活動の成果を評価する指標として長年にわたり重宝されてきた。「広告であればこれだけの費用がかかる」とメディア露出の価値を置き換える手法であり、経営層へ瞬時に広報効果を伝えるには便利である。しかし、実際に広報活動が消費者に与えた影響を反映できない点は現場でも大きな課題だった。
あるプロジェクトでSNSでのエンゲージメントやブランドへの信頼度を高める施策を実施した際、広告換算では十分にその価値を示しきれなかったことがある。例えば、同じ媒体で取り上げられたとしても、消費者の反応は異なる。多くの「いいね」やシェア、コメントなどエンゲージメントの高い投稿があった場合、ブランドに対する好意度や購入意向が確実に向上していると判断できた。しかし、これらの質的な成果は広告換算の枠内では測定されない。数値上は単なる「露出の金額評価」にしかならなかった。経営陣から「どのようにこれが信頼向上につながっているのか」と問われるたびに、広告換算値の限界を痛感した。
広告換算は、広報効果を一目で示す手段としては確かに有用だが、広報の本質的な価値を示すには不十分である。ブランド認知やエンゲージメント率、消費者の購買意向、そして具体的な行動変化を示す数値こそが、広報の貢献度を評価する真の尺度である。データに基づいた包括的な測定手法が広がっていくことで、広告換算はやがて“過去の遺物”となり、広報はその進化とともに、さらに戦略的な役割を担うようになるだろう。
視点2
メディア露出測定の新しいアプローチ
デジタル時代ならではの手法を
広報活動の効果測定において、広告換算に代わる新たな手法は多岐にわたる。デジタル時代の到来により、メディア環境は多様化・複雑化し、ウェブサイト、SNS、オンラインコミュニティなど、多様なチャネルが存在する。これらのデジタルメディアでの露出を適切に評価するためには、新しい測定方法とデジタル時代ならではの視点が求められている。
①ウェブサイトトラフィック分析
ウェブサイトはブランドと顧客をつなぐ重要な接点であり、その訪問者の行動を分析することは、メディア露出の効果を測定する上で不可欠だ。ウェブサイトトラフィック分析により、ユーザーがどのようにサイトを訪れ、どのコンテンツに興味を持っているかを把握できる。これにより、広報施策がどの程度ウェブサイトへの誘導に成功しているかを評価できる。具体的には、図1の指標を定期的にモニタリングする。
これらのデータを時系列で分析し、メディア露出後の変化を把握することで、広報施策の具体的な効果を評価できる。また、コンバージョン率(CVR)や離脱ポイントの分析、A/Bテストによる最適化も行い、ウェブサイトのパフォーマンス向上につなげていく。かつて、私が大規模なプロモーションのアドバイザーを務めた際に、ウェブトラフィック分析を試みたところ、訪問者数は施策により急増したものの、その多くがコンバージョンに至らないまま離脱していた経験がある。ページの内容がターゲットユーザーの期待と一致していなかったことが原因だと分かった。すぐに、A/Bテストを実施し、コンテンツを調整した結果、コンバージョン率は大幅に改善した。
図1 ウェブサイト分析の主な指標
セッション数
サイトへの訪問回数を示し、全体的なアクセス量を把握
ユーザー数
実際に訪問したユーザーの数で、新規訪問者とリピーターの割合も分析する
ページビュー数
ページが閲覧された回数で、サイト内のどのページが人気かを示す...