30代の横尾忠則が描き上げた371枚の挿絵
横尾忠則 幻花幻想幻画譚 1974-1975
1974~75年にかけて、東京新聞に連載された瀬戸内晴美(現・瀬戸内寂聴)による時代小説『幻花』。この小説のための挿絵を描いていたのが、横尾忠則だ。自由奔放な発想をもって、実験的手法を繰り出しながら生み出された超絶技巧の挿絵である。
2015年12月、兵庫の横尾忠則現代美術館にて、挿絵の全原画が一般公開されるまで、その存在を知るものはほとんどいなかった。そして今回、その挿絵原画全371点を見ることができる「横尾忠則 幻花幻想幻画譚 1974-1975」が、9月5日よりギンザ・グラフィックギャラリーで開催される。
横尾自らが命名した作品集『幻花幻想幻画譚』に収められている作品は、すべて約8cm×14cmの小さな絵。唐突に登場する物語に関係のないモチーフ、作家瀬戸内自身の肖像、時には原稿ができあがる前に作り置きしてしまった絵など、そこには横尾イラストレーション・ドローイングの真骨頂、横尾グラフィック・ワークの最高傑作が凝縮されている。制作開始時、横尾は39歳。70年代半ばの、時代の空気やエネルギーを受けながらつくられた作品のパワーを堪能したい …