ブルボンは、2016年3月に「スライス生チョコレート」を全国発売。そのプロモーション施策として、料理動画「DELISH KITCHEN」を活用した。マスメディアでの広告とスマホ動画のSNS配信を掛け合わせた施策の背景を、ブルボンで宣伝企画を担当する統合企画部 CSR統合企画室の斎藤綾氏、佐々木修氏、エブリーで「DELISH KITCHEN」の編集長を務める菅原千遥氏に聞いた。
テレビCMだけでは伝えきれない 使用シーンをレシピ動画で訴求
斎藤:「スライス生チョコレート」は、パンなどにのせたり、あるいは巻いたり、包んだり、型を抜いたりとアレンジがいろいろできる新感覚チョコレートです。フィルムから剥がして使えることと、2mmという薄さを実現した点に商品の特長があります。
佐々木:当社がこれまで製造・販売してきた菓子類と比べると、「スライス生チョコレート」は使用法が多岐にわたる点が大きな違い。プロモーションに際しても、菓子とは違った新しい取り組みが必要だと考えていました。2015年9月に一部の地域で限定発売をしていますが、初の全国発売ということもあり、流通様との商談の支援や消費者の方の認知獲得を目的に、テレビCMを出稿しました。合わせてレシピ動画の制作・配信を検討することになり、「DELISH KITCHEN」を活用することにしました。
斎藤:「スライス生チョコレート」だけでなく、普通の菓子類についても食材のひとつとして活用していただく、レシピ提案が業界的に盛んになっています。そこで、日頃からレシピの研究をしているのですが、その中で「DELISH KITCHEN」を知り、そのわかりやすい動画のスタイルに興味を持っていたことが選んだ理由です。「スライス生チョコレート」は2015年に限定で発売をした際、SNSを中心に口コミが盛り上がり、ネットとの相性の良さも感じていました。
菅原:私も、この商品の存在を最初に知ったのは、SNS上の口コミでした。
斎藤:この商品の課題は現段階で市場にないスライスタイプの生チョコレートをどのように使えばよいか、見ただけで伝わりづらかったことと、日常的に使ってもらうにはどのように訴求すればいいのかがポイントでした。また店頭ではスライスチーズに埋もれて存在が薄くなってしまうので、店頭販促にも力を入れなければならないと感じていました。
実際に「つくってみよう!」と思わせるユニークなレシピ開発
菅原:商品の抱える課題を元に、今回は3種類のターゲットを設定し、それぞれに合った3種類のレシピをご提案しました。1つ目は、ユーザーの属性を問わない王道レシピである、「食パンにのせる」というマス広告で発信されているメッセージに合わせた「スライス生チョコフレンチトースト」。2つ目は、大人世代に向けて、おつまみとして食べるレシピを企画。「スライス生チョコラムレーズンバター」は、ラムレーズンとクリームチーズを混ぜたものを「スライス生チョコレート」で巻いたレシピです。ここでは特に、2㎜という薄さの形状だからこそ実現できるレシピ、という点を意識して開発しました。3つ目が、子ども向けの「生チョコチーズケーキ」。生地にチョコレートを入れるだけではなく、焼きあがったケーキに「スライス生チョコレート」をのせ、ドライヤーの熱で溶かしてコーティングするというもの。意外な方法で、反響も多く寄せられました。
斎藤:実際に出来上がったレシピ動画を見て、見ているだけで楽しくなる仕上がりになっていると感じました。「ドライヤーが使われるなんて!」って(笑)。社内でも、「面白いね」と評判になりました。ユーザーからのコメントがダイレクトに見える点もありがたかったです。
佐々木:狙っていたテレビCMとスマホ料理動画の相乗効果も生まれました。テレビCMで商品を知り購入した方が、スマホ料理動画を見て実際にレシピ通りにつくってみた、という声が多く寄せられました。新規性のある商品なので、気になってお試しで買ってくださっていたけれど、使用法が分からず冷蔵庫に入ったままだった。そこに「DELISH KITCHEN」の動画で使用シーンを訴求できたことで、「使う」という次のステップへと行動喚起できた実感があります。
営業からも好評 流通との商談にも活用
佐々木:「DELISH KITCHEN」さんは、リーチ力があることや、実際に出稿してみて、コンテンツの二次利用ができることのメリットも大きいと感じました。店頭で動画を流すことで、販促にも活用できています。また、流通営業の担当からは商品説明をする際に、商品の動画を具体的に伝える料理動画を直接見せることが大きな商談材料になるという声も聞いています。
菅原:他の出稿企業さんからも、営業の現場や店頭で使っているというお話をよくいただくようになりました。百聞は一見に如かず、と言いますが、動画を見れば一目で「商品の活用シーン」が分かりやすくなると思っています。
斎藤:今後、この商品だけではなく「お菓子」として販売されている商品でもレシピ提案ができないかと検討しています。社内でレシピ開発をしているのですが、なかなか動画制作までは手が回らないことも多いような状況です。今後も、SNSを通したリーチ力や拡散力を持つ、「DELISH KITCHEN」の料理動画を活用していきたいと考えています。
ユーザー目線のコンテンツで、製菓・製パン初心者へのブランド認知を
製菓・製パンの材料・器具を、ネットや直営店・外販などを通して販売し、お菓子づくりの愛好家層から長年支持を集めてきたクオカプランニング。製菓初心者層向けへのブランドコミュニケーションとして、分散型料理動画メディア「DELISH KITCHEN」を活用した。その狙いを、クオカプランニングの代表取締役・岩間建作氏、エブリーで「DELISH KITCHEN」の編集長を務める菅原千遥氏に聞いた。
初心者との接点づくりに「スマホ動画」が有効
岩間:cuoca(クオカ)とは料理人・コックを意味するイタリア語。私たちは、手づくりの料理を通しておもてなしをする人たちのことを「cuocaさん」と定義して、その「cuocaさん」を増やしていくことをマーケティングのテーマにしています。「cuocaさん」に対して我々が提供しているのは、製菓製パンの材料・器具だけではなく「お菓子をつくる時間」や「それを食べる時間」という価値。ですから、商品の背景にあるストーリーが、きちんと伝わるコンテンツを通じて、コミュニケーションをする必要を感じていました。
その中で、クオカプランニングとしては日常的にお菓子づくりに親しみのない方向けのコンテンツにそこまで注力してこなかったという課題がありました。「cuocaさん」を増やしていくためには、初心者のお客さまの実態に沿ったコンテンツが必要。さらにユーザーの視点に立った社外の人の知見が必要と考え、「DELISH KITCHEN」とのコラボを決めました。
クオカプランニング社内には、製菓・製パンのプロフェッショナルが多く在籍し、「cuocaさん」向けの新しいレシピを開発しています。ただ、レシピの視点が愛好家向けのため、初心者には分かりづらいと感じられてしまう部分もありました。
その中で、「DELISH KITCHEN」にはレシピを再現するユーザーが多いという点に注目していました。コメント欄を見ていると、実際に料理やお菓子をつくっている様子が見受けられました。そこで見ているユーザーの感覚を知ってもらおうと、全社員が集まる会議で「DELISH KITCHEN」の動画を流したこともあります。
菅原:私自身、お菓子づくりから料理をスタートしており、もともとcuoca利用者の一人。「DELISH KITCHEN」では、「料理初心者にもわかる表現」を大事にしています。お菓子づくりには、文字と写真だけのレシピだけではわからない部分が多くあります。例えば、「さっくり混ぜる」とはどんな混ぜ方なのか…、テキストだけではイメージしにくいと思います。また、美しく撮影された写真と、自分のつくったものを比較して「これで正解なの?」と悩むことも。その点、動画は全体の流れやイメージを掴みやすいと思います。
岩間:最初に調理工程の全体像を掴めると、次にどうしたら良いのか、作業のイメージができますよね。この「短時間で全体イメージがつかめる動画」は、忙しい中でも料理やお菓子づくりをしたい方のニーズにも合っていると思います。
動画を通じて自然にブランドを認知させる工夫
菅原:クオカプランニングさんからの依頼を受け、お菓子づくり初心者が挑戦しやすいレシピを企画しました。初回で実施したのは、ミキサーで材料を混ぜて焼くだけのチーズケーキ。また材料だけではなく、「cuoca」のマフィン型や道具を使用し、自然と「cuoca」ブランドに触れるきっかけをつくる工夫をしました。
岩間:出来上がった動画を見て、「自分にもできるかも」「自分もつくってみたいな」というユーザーの共感をつくりだすのが、非常にうまいと感じました。私は前職ではデジタルマーケティング会社でCOOを務めており、数々の企業に対してデジタルマーケティングツールの導入をサポートしていました。その経験からも、どんなテクノロジーを使うかより、そもそも何を実現したいのか、という目的があることや、そのツールに乗るコンテンツの重要性を実感していました。その意味でも、ユーザー視点に立った「DELISH KITCHEN」の動画は、新たな「cuocaさん」にとって、とても魅力的なコンテンツだと感じました。初心者だけではなく、一時期お菓子をつくっていたけれど、今は少しお休みしている層に対してリマインドのようにコミュニケーションするときにも、効果的だと思います。
瞬間的な結果よりも長期的なブランド接点を重視
岩間:数値的な面で言うと、動画を公開した際に、40万回再生という高い視聴回数を記録したことに驚きました。また、「cuoca」のFacebookへの流入も、動画公開前と比べると4970%という結果に。動画で使用していたマフィン型の売上拡大にもつながりました。ただし、こうした『瞬間風速』的な結果だけを見るのではなく、長期的に「cuoca」というブランドと、新規顧客との接点をつくっていくことを重視しています。長期的な視点でお菓子づくり・パンづくりを楽しむ方の裾野を広げていく。そして、「何かつくりたいな」と思ったときに、自然に「cuoca」を連想してもらえるようになれたらと考えています。
菅原:お菓子づくりは、季節のイベントとの連動性も強いので、今後はハロウィンなどのイベントと「cuoca」ブランドをつなげるようなレシピの提案をしていきたいと考えています。
岩間:時期ごとの文化や習慣と連動した「DELISH KITCHEN」の動画をきっかけに、「cuocaさん」が増えていく。「cuoca」発信で、新しいカルチャーをつくっていくことも、今は視野に入れています。SNSでのスマホの動画は、能動的に検索する人たち以外の層にも、自然と接点をつくることができる。「cuoca」はECサイト・直営店・スタジオ・外販と4つのチャネルを展開していますが、オムニチャネルの展開は「ツールを入れておしまい」ではなく、そのチャネルごとの「人の気持ち」「ストーリー」をうまく反映したクリエイティブやコンテンツが肝だと考えます。「DELISH KITCHEN」を通して、そうしたストーリーを積み重ねていきたいですね。
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