「お家騒動ほど、広報として対応しにくい不祥事はない」と専門家らは言う。ここでは、多くの企業のガバナンス体制や「創業家の乱」の数々を取材してきたジャーナリストの視点から、2016年に起きた騒動と広報の課題について検証する。
2016年は有名企業を舞台にした創業家がらみのトラブルが頻発した年だった。それまで円滑に見えた創業家と会社の関係が、ある日突然、醜く歪み、会社のイメージや信用を毀損する。「創業家の乱」はなぜ起きるのか。そのとき、会社はどう対処すべきか。個々のケースを元に検証する。
問題の経緯 | |
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7月11日 | 出光興産は創業家側との会談を開くものの、昭和シェル石油との合併計画をめぐる協議は平行線のまま。10月には合併延期、11月に3度目となる昭和シェル株取得の延期を発表している。4月に鈴木敏文会長が引退を発表したセブン&アイ・ホールディングス、創業家との対立が続く大戸屋ホールディングスなど、騒動続きの1年だった。 |
メディアの標的になる物語性
「お家騒動」「骨肉の争い」。マスメディアにとって「血の匂い」がする創業家がらみの騒動は格好の標的だ。サラリーマン同士がぶつかり合う権力闘争より、物語性があり、読者や視聴者から見て分かりやすいからだ。
会社とすれば避けたいところだが、大抵の場合、企業には会社を興した創業者がおり、その血を引く創業家が存在する。そして程度の差こそあれ、彼らは会社の大株主でもある。会社としては、彼らの意向を無視できない。
一方で会社が上場している場合、経営陣は創業家以外の株主の利益も守らなくてはならない。創業家がその特権的な立場を使って自分たちの権利を主張し、それ以外の株主の利益を脅かすような要求をしてきたときには、唯々諾々と従うのではなく、毅然とした態度ではねつける必要がある。
つまり会社は創業家と「是々非々の関係」を保つしかない。ガバナンス論でいえば …
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