西武ホールディングスは2016年に設立10周年を迎え、記念誌を発行した。中面では、西武鉄道の総会屋への利益供与事件から上場までが綴られている。同社が「負の歴史」を包み隠さず、記録に残そうとした理由とは。
鉄道・レジャー・ホテルなど、グループ全体で約120社を抱え、バブル期にはエクセレントカンパニーとさえ呼称された、『西武王国』の瓦解は突然やってきた。」──。2016年7月に発行した西武ホールディングス(HD)設立10周年の記念誌は、こんな衝撃的な書き出しで始まる。
2004年に総会屋への利益供与事件や有価証券報告書虚偽記載が発覚して以降、その歩みは危機の連続だった。西武鉄道の上場廃止やグループ再編、リーマン・ショックや東日本大震災の影響を受けたレジャー事業の低迷、筆頭株主からの敵対的TOB、そして2014年に西武HDとして東証一部に上場──記念誌では、この再生までの変遷について大手新聞社から独立した土屋直也氏がレポート。18ページにわたり記している。
企業の周年誌といえば輝かしい功績や歩みが綴られるものであり、過去のネガティブな出来事を積極的に取り上げようとする企業は少ないだろう。なぜ、これほど克明に危機の数々を残そうと考えたのか。西武HD広報部長の西山隆一郎氏は、その理由について「社員が実感を持って、激動の10年を振り返るチャンスは今しかなかった」と説明する。
「当時をよく知る幹部社員の記憶が鮮明で …
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