時は人口減少時代。自治体PRに今、大きな変化が訪れようとしている。これまで以上に観光誘致や移住促進にしのぎを削る中、地域間競争を勝ち抜き、地域に人を呼び込むために、押さえておきたいポイントとは。

しばしばメディアでも取り上げられ、移住先として注目を集めている徳島県美波町。移住先の住民と移住者との交流も活発だ。
地方創生で高まる広報ニーズ
2040年までに全自治体の半数が存続の危機を迎える─。2014年5月、「地方創生会議」(座長・増田寛也元総務相)がそんな衝撃的なレポートを発表してから1年が経つ。こうした事態を打開しようと、政府は今年6月、地方創生政策の指針を示した「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」を閣議決定。安倍政権の重点政策である地方創生が、大きく動き出した。
閣議決定では、人口減少や東京への一極集中といった課題の解決を目指し、企業や政府機関の地方移転、高齢者の地方移住を促す地域づくりの推進、雇用創出や魅力的なまちづくりに取り組む自治体への新型交付金を創設する方針が盛り込まれ、各自治体では今年度中に地方版総合戦略を策定し、この具体的な道筋について目下、議論が進められている。
そんな中、今まで以上に、地方を話題化し、人を呼び込むためのPRの重要性が改めて認識されようとしている。これまで鳥取県、京都府などの自治体PRに携わってきたオズマピーアールの名和佳夫氏は、昨今の地域PRの現状についてこう語る。
「ここ2、3年、『自治体PR元年』の到来を感じさせるほど、従来の自治体の広報コミュニケーションに変化が生じています。人口減少社会に突入し、自治体も税収増が見込めない中、今までブランドイメージが高かったような都市さえも情報発信を強化したいというニーズが高まっています」。
そこで、キーワードとなるのが、観光や移住などを包括的に捉えた、交流人口の増加だ。まずは観光を入り口としてPRして認知度を高め、地域のよさを知ってもらい、最終的に地方への移住につなげようという動きが生まれつつある。
また、名和氏は、自治体職員に起きているある変化を指摘する。従来では、広報課や観光課、シティプロモーション課などが広報活動を担当するもの、と考えられてきたが、例えば農林水産業や商業、移住促進など、幅広いセクションで広報のニーズが高まっているという。
「実際に自治体から『現場レベルでも理解できるよう、広報について教えてほしい』というセミナー講師の依頼を受けることが増えています。特に、広報に理解のあるトップがいるところでは顕著ですね。自治体では、広報課だけでなく …