東京・千代田区の新社屋にて。吉田会長は日々、東京、黒部を行き来する、多忙な毎日を送っている。
YKK 代表取締役会長CEO 吉田忠裕氏(よしだ・ただひろ)1947年生まれ。1972年8月入社、1990年YKK AP代表取締役社長、1993年YKK代表取締役社長に就任。2011年から現職。YKK AP代表取締役会長も兼務する。 |
私の考える官民連携の地方創生ビジョン
- 自然豊かな地域の特性を活かし、長期的な視点で必要なサービスを整えていくべき
- コンパクトシティをコンセプトに、環境にやさしいまちづくりに取り組む
- 教育や交通インフラの問題は、一企業だけで対応できる問題ではない。保育園や小中学校など教育環境の整備をまちぐるみで考える必要がある
約230人を東京から富山へ
安倍晋三内閣が三本の矢のひとつとして掲げる地方創生では、東京への一極集中を防ぐため、都内に本社を置く企業に地方移転を求めている。今年6月に閣議決定された地方創生の基本指針では、地方移転を促進するため、東京都内23区に本社を置く企業が地方に本社機能を移した場合、法人税の優遇措置も検討されるなど、支援に本腰を入れる構えだ。
このような議論が話題になる前から、本社機能の移転を進める企業がある。ファスナー、建材大手のYKKグループでは、2016年3月末までに本社機能の一部を富山県黒部市に移転させると発表。「地方創生のモデルケース」として注目を集め度々取材を受けているほか、経済団体や自治体からの視察依頼も相次ぐ。
しかし、“言うは易し”である。一口に本社機能の一部移転と言っても、実際には移転先の富山県黒部市には賃貸住宅が少なく住居選びが難しかったり、公共交通網が整っていなかったりと、様々な課題が見えてきた。吉田忠裕会長にこれまでの取り組みと、今後の展望について聞いた。
新幹線開業で日帰り圏内に
2015年3月、北陸新幹線が開業し …
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