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PRで加速する地方創生

企業と地方自治体、共創PRを実現するためには?

事業構想大学院大学副学長 日本広報学会副会長 上野征洋氏

2040年までに半数の自治体が存続の危機を迎える─。そんな衝撃的な報告を含む「増田レポート」発表から1年。上野征洋氏が、新たなステージを迎えた「地域PR」の今について解説する。

「消滅可能性都市」の衝撃

日本創成会議の「人口減少問題検討分科会」が2014年5月に発表した、いわゆる「増田レポート」は「消滅可能性ショック」を全国の自治体に与えた。その骨子は「2040年までに全国の市町村の半数が消滅する可能性がある」というもので、データ分析からは当然の帰結だが、「消滅都市」というセンセーショナルな言葉が独り歩きして、ことさら大きく取り上げられた向きもある。

増田レポートの意図は、都市の消滅にあるのではなく、(1)人口減少を冷静に認識する (2)対策は早いほど効果的(3)若者や女性が活躍できる社会をつくる、という3つの要旨にあり、「ストップ少子化・地方元気戦略」というタイトルがその狙いを語っている。

この衝撃から問もなく安倍政権は内閣改造を行い、石破茂氏を地方創生担当大臣に指名して「まち・ひと・しごと創生本部」を設置。12月には「地方創生の総合戦略」を閣議決定した。この長期ビジョンの骨子は、まさに「増田レポート」のコピーであった。この長期ビジョンのメインテーマは「国民の『認識』の共有と『未来への選択』を目指して」である。すなわち、上述の3つの要旨を「もっと国民に理解してもらおう」というわけで、まさに広報課題そのものである。そこへ浮上してきたのが「産官学金労言」という連携を示すキーワードである。

この用語は、2015年1月に石破国務大臣が使うようになって急に普及したが、地方版総合戦略を策定するために、「産官学」に加えて「金融機関、労働団体、言論メディア」を加えた「オールローカル体制」を築こうと意図された。その本音は「もっと危機感を、もっと政策に理解を」というところにある。

しかし、この政府の意図は裏返せば国民の無関心、とくに東京一極集中で首都圏に暮らす人々ほど地方創生に背を向けている、という現実がある。

成熟社会を迎えたわが国の泣きどころは、少子高齢化の進行とそれに伴う地方の疲弊である。この人口減少時代にこそ、地域社会は産業界や各界各層と力を合わせて、情報発信を強化し、多くの人々に地方移住や地域産業の現実に向き合ってもらおうというのが、社会的要請である。この要請にどう応えられるのか。情報発信を強化するポイントをいくつか考えてみよう。

連携と情報は「価値磨き」から

「産官学」という連携の現状は多種多様で ...。

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