2006年の『カンブリア宮殿』(テレビ東京)放送開始以来、MCを務めてきた村上龍氏。これまで450人以上の企業・団体のトップへのインタビューを通じ、村上氏が見つめてきた「時代を生き抜く」企業トップの横顔とは─?

作家 村上 龍氏(むらかみ・りゅう)
1952年長崎県生まれ。1976年『限りなく透明に近いブルー』で第75回芥川賞受賞。『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、『半島を出よ』では野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。『トパーズ』、『KYOKO』は映画化され、監督も務めた。最新作は『オールド・テロリスト』。メールマガジン「JMM」を主宰、『カンブリア宮殿』(テレビ東京)にメインインタビュアーとして出演。
常にヒントを探す経営者たち
─放送開始からまもなく450回を迎える『日経スペシャル カンブリア宮殿』(テレビ東京)。中でも、ゲストである社長と、村上さんや小池栄子さんとのスタジオトークから、これまで様々なドラマが生まれてきました。
ゲストの方には、スタジオで一緒にVTRを見たり、収録で話したりしながら「今まで自分がやってきたことは、間違っていなかった」ということを確認して帰ってもらうのが一番いいと思っています。
カンブリア宮殿に出る経営者は皆さん、共通して謙虚な姿勢を持っています。かつ、すでに成功しても「このままでいい」と、現状で満足している人はいません。
どう見ても「成功企業」だったとしても、「成功している」と思っていない企業が多いです。まだ発展途上だと思っているんでしょう。今までやってきたことに対する、自信を持っている人は多いとは思います。
そういう方は、常に「どこかにビジネスのヒントはないか」と考えているような人が多いですね。ラーメンの「日高屋」を手掛ける、ハイデイ日高の神田正会長は、移動の際に、ハイヤーやタクシーを利用せず、「ここに店を出したら儲かるだろうか」と考えながら、自ら街を歩き回っているようです。面白いですよね。神田さんは「山手線の内外は、だいたい歩いた」と言っていました。
現実的な社会と接した方がいいと考えている社長が多いように思います。

MCの村上さんや小池栄子さんと、ゲストとのスタジオトークが番組の要。収録は時に2時間に及ぶこともある。
─インタビューの準備はどのようにされているのでしょうか。
カンブリア宮殿には、三井物産のような大手のグローバル企業から、年商が5億未満の企業も出ます。8割は知らない企業ですので …