社外への発信以上に重要なのが、従業員に対するメッセージだ。サザビーリーグでは、トップのメッセージを伝え、グループ全体の一体感を高めようと、従業員を巻き込んだイベントを実施している。
イベントで鈴木陸三会長に質問をぶつける従業員。このほか、会場からは「モチベーションを維持するために何をしているか」「新規事業を始める際のポイントは」などの質問があがった。
ファッションブランド「ロンハーマン(Ron Herman)」や「ESTNA TION」のほか、生活雑貨「Afternoon Tea LIVING」など、30以上のブランドを日本で展開するサザビーリーグ。2014年に全保有株を売却し契約を解消したが、スターバックスを日本に根付かせた企業としてもその名をはせている。1972年に現在の会長である鈴木陸三氏が10人ほどでスタートしてから43年、現在では約4000人(アルバイトを含めると約7000人)が働く、一大カンパニーへと成長した。
一方で、分社化などを行い、各ブランドの自律を推進した結果、社員の中にサザビーリーグの一員であるという帰属意識や、若い世代にサザビーリーグが大切にしてきたスピリットが薄まっているといった課題が生じていた。そんな中、創業者のマインドやDNAを伝え、社員の心をひとつにしようと、同社が3年前からスタートさせたのが、年に1度、社員を招いて実施するイベント「The SAZABY LEAGUE FORUM」だ。鈴木陸三会長や森正督社長は、社員にどんなメッセージを伝えているのか。5月26日、舞浜アンフィシアターで実施されたイベントの模様をレポートしたい。
対談する鈴木陸三会長(右)と森正督社長。2人がこうしたイベントで対談するのは初めてのことだ。
現場の従業員をねぎらう
5月26日、アンフィシアターには、全国から約950人のスタッフが集まっていた。今年で3年目となるこのイベントには、当初マネージャークラスが参加していたが、現在は現場のスタッフも多く参加。来年度までの4年間で、大半のスタッフがこのイベントに参加したことになる。会場には、20代前半の若いスタッフの姿や、普段あまり接点がない他のブランドのスタッフと談笑する様子も見られた。
午後1時、イベントがスタート。白いタキシードに身を包んだストーリーテラーが、創業者である鈴木会長と森社長が、どのようにブランドを拡大し、現在のサザビーリーグをつくり上げていったのか、43年の歴史をまるでひとつの物語のように説明する。
いよいよ今回のメインイベント、鈴木会長と森社長の対談が始まった。スモークが立ち込めるステージに登場した鈴木会長と森社長。まず、鈴木会長は、会場の参加者にこう呼びかけた。「皆さんには、商品の考え方をお客さまに手渡すという、一番重要な大使の役割を担っていただいている。これはとても大変なことです。今日は、現在のサザビーリーグに成長するまでの流れを皆さんと共有したい。ウェルカム!」。
会場からは、自然に歓声と拍手が巻き起こる。参加者の多くは現場で働くスタッフで、社長や会長とは接したことがないスタッフがほとんど。初めて会長から直接ねぎらいの言葉をかけられた参加者は、どこか誇らしげにも見えた。
その後、鈴木会長から、創業前に欧米に旅立った理由や森社長との出会い、社を立ち上げるに至ったいきさつなどを説明。起業当初はアパレルの下請けをしていたが、徐々に時代に合った高付加価値商品を開発するという、新たな小売業の役割に気づいたという。
「自分の信念を持ってものをつくり、それを伝えるのが、本当の意味でのリテーリング(小売業)なんじゃないか ...