トップ広報において、投資家は重要なステークホルダーである。IRのコンサルティングやトレーダーの経験もある経済ジャーナリスト・内田裕子氏が考える、強いトップの発信力とは。
4月28日、2014年度決算概要を説明する、パナソニック津賀一宏社長(写真右)。
BtoB事業にシフトし、業績を伸ばしている。以前、津賀社長にインタビューをしたことがあるという内田氏は、津賀社長のように変化に強い経営者こそ、業績が伸びるという可能性を感じさせ、投資家の注目も高まると語る。
- 「ウチの社長、生放送では話せないです」といった広報の過剰な心配が、社長のイメージを貶めてしまう
- 海外投資家はROE経営を強く求める。ただ、それに翻弄されてしまうと日本企業の良さを失ってしまう
- 株の長期保有のニーズが増えているからこそ、今まで以上に経営に厳しい目が向けられている
経済ジャーナリストの視点
広報が経営者の評判を決める
当社の代表である、経済ジャーナリストの財部誠一とともに、15年間近く一緒に経営者のインタビューをしています。財部が生放送で企業トップにインタビューする経済番組『財部誠一の経済深々』(BS11)に、私もスタッフとして関わっていたのですが、企画段階から「ウチの社長、生放送はだめなんです」と警戒される広報の方がいまだに少なくありません。
たとえ生放送だとしても、どんなことでも自身の口から、自身の言葉で説明できる経営者はプロフェッショナルだと思いますし、決算説明会や経営方針発表会、株主総会など、経営者が矢面に立って話さなくてはならない場面は多々あります。こちらからすれば、そうした広報の対応によって、「株主総会や経営方針説明会でも、想定問答をがっちりと固めてやっているんだろうな」というところまで想像してしまい、広報の対応次第では、トップの評判を貶めることにもなりかねません。
広報の役割として「会社が発信する情報をきちんとチェックする」ということは重要ですが、チェックが過剰になりすぎてしまうと逆効果。特にグローバル市場では、どんな場に出ても堂々と自分の言葉ですぐ答えられる能力や度胸、胆力が必要で、企業広報はそのような視点で自社の社長が判断されているという点を重く受け止めるべきです。
一方、「うちの社長は何でもしゃべるので聞いてください」という広報の方もいますし、最近はオープンな姿勢の方も増えてきているように思います。本当に名実ともに素晴らしい経営者だなと感じる方は、言葉に力があります。そういう経営者に会うと、インタビューをしていても引き込まれます。
効率性重視の海外投資家
必ずしも王道の出世ルートを歩んできたという方だけではなく ...