高度成長を加速させた1964年の東京五輪とは異なり、これからの日本は付加価値の高い成熟社会のお手本となるモデルを築いていく必要がある。国や都市、企業、さらに地域はオリンピックというムーブメントをどう取り込むべきか。

都心からのアクセスの良さで、2010年の国際化以降存在感が高まっている羽田空港。14年にはさらに発着枠が拡大。「5本目の滑走路建設を」との期待の声も聞かれる。
医療・健康分野に可能性
東京オリンピックが東京や日本にもたらす意義は何か。日本大学理工学部の岸井隆幸教授は、「世界に東京や日本の実力と魅力を示す絶好の機会になる」と指摘する。
1964年の東京大会と比べて、ロンドン大会は参加国・選手数ともに約2倍の規模。2020年の東京大会の規模はそれ以上になると予想される。またメディアは、前回の東京オリンピックの時代とは比べものにならないくらい著しく発達しており、オリンピックを見る人の数も爆発的に増えている。2020年の東京大会は、メディアを通して、世界中の人々が成熟した東京や日本の姿を見ることができ、その実力や魅力をリアルに感じ取ることになるだろう。
さらにもう1点、岸井教授は「オリンピックは国内の力を再確認でき、大会閉会後も良い影響を与えるはずだ」とも考えている。
東京オリンピックは、スポーツに親しむ若者にとって大きな目標となる。それ以上に、「世界トップクラスの長寿大国日本の健康寿命をさらに伸ばす可能性がある」と指摘する。オリンピックはスポーツを通して国民の健康への関心を高める。身近にさまざまなスポーツ施設が整ってくることで、中高年がスポーツに親しむ機会も増えるだろう。医療や福祉や健康というものがシステムとして構築されれば、まさに健康寿命大国日本の姿を築くことができる。
「そのノウハウは、今後出てくると思われるアジアの国々の高齢化社会にも大いに役立つはずです。またオリンピックにはたくさんのボランティアが必要です。仕事をリタイアした人々がボランティアや地域のコミュニティビジネスなどに参加するきっかけになるなど、ソフト面でも良い効果をもたらすと考えられます」。