「トーキョー!」─2020年オリンピック開催都市決定の瞬間、ブエノスアイレスの会場で歓喜の中にいた招致アンバサダー小谷実可子さん(元・シンクロ銅メダリスト)。本誌で連載を持つ旧知の下村健一氏と帰国後に語り合った、用意周到な舞台裏とは......。
東京招致決定の直後、ガッツポーズで喜ぶ小谷さん(最前列右端)
調べぬき、組み立て、迷わず
下村▶ 小谷さんにとっては、長野以来通算4度目の招致活動だったんですよね。今回は自信はありました?
小谷▶ はい。でも最後に(福島原発の)汚染水問題が出た時には、日本国内の皆さんも心配していたみたいで。
下村▶ 最終プレゼンで安倍首相が短く「The situation is under control.」(状況は、コントロールできています)と言い切った時、僕はマズい、と思いました。こんな一言では、「我々をごまかす気か」「やはり説明不能なのか」といった反発を招いてしまう、と。その直感は、見事に外れましたが...。
小谷▶ ブエノスアイレスに入ってからも東京招致団の中心メンバーは、投票権者への最後のロビイングで得た感触を、小まめにリポートにまとめて情報共有してました。そうすると、単なる票読みだけじゃなくて、「汚染水問題について、どの程度気にしているか」といった情報も一緒に集まりますから。
下村▶ その結果を分析して、「長い説明は逆効果。一言で行こう」という判断になったんですね。「たぶん短い方が無難だろう」といった、データに基づかない素人判断ではなくて。
まずスピーチの冒頭でそのようにサラッと一言だけ触れた後、質疑応答の時に、「0.3平方キロ内」云々の説明を加えてましたけど、ああいう《場面の使い分け》も、狙い通り?小谷▶ さぁ...でも、あの場で質問するのは記者じゃなくて、ロビイングで接してきたIOC委員たちだから、大体誰が何を聞くか、察しは付きますよね。