技術の背景に日本人の力
東京での五輪開催が決定したことは、日本があらためて世界の注目を浴びたという点で大きな意義があったと感じています。64年の五輪では、日本の復興と経済発展に世界の注目が集まりました。しかし21世紀に入り、新興国の台頭とともに、相対的に日本の存在感は小さくなってきていました。特に、隣国中国や韓国の成長にともない、“ジャパン・パッシング”、つまり同盟国である日本を飛ばし、米国と中国が親密につながるといった動きも指摘されています。また、2011年は東日本大震災という不幸な出来事、いわばbad newsで世界の注目を浴びることになりました。そういった状況を経て、あらためて今、「日本が勝った」というgood newsで世界の注目を浴びることができたのはとても大きな効果でしょう。五輪開催は、日本を発信する最大のチャンスになります。そういう環境が整ったということは、海外発信を担う広報にとっても朗報に違いありません。
今後、企業がすべきことは、「勝った」時に打ち出した日本のメッセージを分析し、忠実に実行することではないでしょうか。招致活動は「オールジャパンで勝った」と言われていますね。まさに、日本人特有の人間力、そしてこれまで培ってきた社会の技術力や経済力、その全てを日本の良さとして打ち出した総合力で勝ちました。
日本はこれまで、技術力そのものを伝えることでは成功してきました。それは、商品をもって実感してもらったものです。一方で、その背景にある社員の力、ひいては社会の力を伝えることにおいては、その発信量・発信力ともに弱かったと言えます。いまや流行語になりそうな勢いの滝川クリステルさんの「おもてなし」プレゼン。もしかしたら、私たち日本人でさえ忘れかけていたかもしれない日本の良さを世界に向けてあらためて印象づけることができました。
プレゼンテーションで伝えたこれらのエッセンスをかみ砕き、これを一つの大きな傘のように掲げ、その中で各企業はどのようなメッセージを打ち出すべきか、戦略を練るといいでしょう。