訪日観光客は世界で33位
日本国民共通のゴールが7年後にできたことが、東京五輪開催が決まったことの大きな意味だと考えています。大会の成功はもちろん必須の条件ですが、オリンピックやパラリンピック自体は短期間のイベントです。そのためだけに巨額の投資をしても、立ち行かなくなるのは目に見えています。むしろ、五輪の先を見据えたシナリオをつくるべきでしょう。「オリンピックは東京だけの話」との声も聞かれますが、たとえば海外からの旅行者が来日すれば、東京だけでなく他の都市や観光地にも訪れるはず。次の7年に向けたキックオフと捉え、ぜひ日本全体のムーブメントにしたいものです。
直接的な効果を想定しやすいのは観光です。昨年の統計では、日本への外国人訪問者数は830万人程度。今年は1000万人への到達が期待されていますが、それでもまだまだ少ないのが現状です。外国人の訪問者数で日本は世界で33位。世界ではフランス、アジアでは中国が圧倒的で、韓国も日本より多い(図表参照)。地理上で不利な側面があるとはいえ、かなりさびしいと言わざるを得ません。
安倍首相はそれを、5年後をめどに倍の2000万人にするとの目標を掲げました。課題はいくつもあります。英語や中国語の案内表示や言葉の問題のほか、インフォメーションセンターの少なさ、両替所も24時間対応のところはほとんどありません。スピリットとしての「おもてなし」はあっても、ハードやソフトのインフラがそれに追い付いていない状況があります。
見る、食べる、体験する......。観光には多くの要素が含まれています。海外からの観光客が楽しめる、日本ならではの文化をどう見せていくか。それは伝統文化に限りません。「クール・ジャパン」戦略も、海外だけでなく国内に向けてどう広げていくか考えるべきですし、日本の素晴らしい多様な文化を世界にどうアピールするかも重要なポイントです。
すでに10年以上議論されていますが、カジノもひとつの選択肢です。商業施設やコンベンション施設、ホテルなどを含めた「統合型リゾート(IR)」として検討され、小樽や沖縄、大阪などいくつもの自治体が誘致に名乗りを上げています。電通も温泉、食文化などの地域資源を活用した日本ならではのIRのあり方について検討しています。「賭場」という負のイメージを持たれがちですが、先進国でカジノが認可されていないのは日本だけ。2000万人という目標を達成させるための切り札の一つであることは間違いないでしょう。