埼玉県川口市のスポーツクラブ「きゅぽらスポーツコミュニティ」は健常者によるブラインドサッカーを取り入れている。もっとも、こうした障がい者との共生に取り組むケースは少ない。パラリンピックに関心を向けることは、こうした活動を後押しすることにもつながる。
地域のスポーツの取り組みといえば、スポンサーを付けたイベントや参加型のスポーツ大会などを想起しがち。もっとも、「オリンピアン」やスポーツボランティアの存在を地域資源ととらえ、日ごろの取り組みにスポーツの要素を生かすことはアイデア次第でいくらでもできる。
「副産物」で地域づくり
2020年のオリンピック開催地が東京に決定した翌日の9月9日、筆者は出張先の福岡にいた。
「東京はオリンピックでにぎやかになるとでしょうね」、「九州は遠かけん、あんまし影響なかっちゃないとですかねぇ」とタクシーの運転手さんは語った。
五輪招致最終プレゼンで佐藤真海氏(パラリンピック女子走り幅跳び代表)は、スポーツがもつ可能性を「スポーツのチカラ」として次のように表現した。
「新たな夢と笑顔を育む力。希望をもたらす力。人々を結びつける力」。また、2016年オリンピックの東京招致に際して斎藤孝氏(明治大学文学部教授)は「オリンピックを含め『祭り』というものは、副産物だらけ。(中略)"副産物"によって有形、無形の関係ができたり、新たなつながりが生まれたり、それをきっかけに後世まで残る何かが創出されたりすることがあります」と、"副産物"がもつ大きな価値を指摘していた。
東京が享受する経済効果が"主産物"であるならば、佐藤真海氏が語った「スポーツのチカラ」は斎藤氏の言う"副産物"にあたるもの。2020年東京オリンピックの"主産物"を直接的に享受しがたい地方では、"副産物"たる「スポーツのチカラ」をしっかりと受け止め、2020年を過ぎてもなお後世まで残しうる価値の創造に注力することが、2020年東京オリンピックを生かした地域づくりを意味することになるのだろう。
本稿では、地方の地域社会において「スポーツのチカラ」を受け止め、後世まで残しうる価値を創造するとは具体的にどのようなことなのかについて、筆者なりの提案をしてみたい。