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デジタル時代に顧客とつながる顧客シフト戦略

「オムニチャネル戦略」から「ユニファイドコマース」へ

加藤利典氏(ベイクルーズ)

ベイクルーズが行うオムニチャネル戦略が、次の段階に進もうとしている。ことし上旬にはInstagramの「Shop Now」機能も実装した。ECを統括する加藤利典氏に、現状と今後の展望について取材した。

(左・中)Shop Nowを用いたベイクルーズの公式Instagramの商品紹介画面。各ブランドの商品を紹介するため、ニュートラルな雰囲気に。(右)リンク先の公式ECページ。異なる着こなしも提案。

「クロスユース」を増やすオムニチャネル戦略

アパレル製造・販売のBAYCREW'S GROUP(ベイクルーズ グループ、東京・渋谷)がオムニチャネル戦略を推進しはじめたのは約4年前のことだ。

2014年当時、店頭での平均年間購入単価は約6万円、Eコマース(EC)での購入単価は約3万円だった。一方、店舗とECの両方を利用する「クロスユース」顧客は、平均年間購入単価が約16万円とECの平均購入単価の2.5倍を超えていた。

こうした「クロスユース」層を増やすべく始めたのが、ECと店舗をつなぐオムニチャネル戦略だ。そこでベイクルーズグループは「4つの統合」を行った。

まずはじめに、実店舗とECサイトの会員データの統合。データを統合することで、顧客がどのチャネルで商品を購入するか、自由に選べるようにした。

次に在庫データの統合。そうすることで、全ての拠点の在庫数を統合し、ほぼリアルタイムで増減がわかるようにした。

結果、ECサイト上で店舗の在庫状況を閲覧できる状態に。顧客が商品を買いたいときに、いつでも商品が買える体制を整えた。

さらに、サービスの統合。販促イベントの開催時期や内容もECサイトと実店舗とでリンクした。また、欲しい商品をEC上で指定した店舗に取り置きしておき、その店舗での試着・購入を可能にした。

そして4つの統合の最終段階として行ったのが、コミュニケーションの統合だ。そのかなめとなったのは、瞬間ごとに顧客が必要とする情報を、最適な方法で配信する「リアルタイムパーソナライゼーション」の実現だ。それまで同社が獲得して来た顧客データを統合・分析することで、可能となった。

その結果、2018年8月期のEC売上高は335億円で、前年比22%増となった。そのうち自社ECのみでの売上高は全体の約60%の195億円と、5年で8倍に増加した。

Shop Nowをいち早く実装 ECへの流入者数は6倍に

ベイクルーズは2018年5月末、国内他ブランドより一足早く、「Instagram(インスタグラム)」の拡張機能である「Shop Now」をオムニチャネル戦略の一環として導入した。同年8月には40弱ある同社のファッションブランドのほとんどのアカウントで実装。目的は公式ECサイト「ベイクルーズ ストア」への流入者数の増加だ。

背景には、Web広告の新規セッション数の停滞がある。同社では主にWeb広告とメールマガジン、LINEで公式ECサイトへ集客してきた。

Web広告を起点とした公式Webサイトへの流入者数は、全体のサイト訪問者のうち最も大きい割合を占める40%~45% …

あと60%

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