ポップアップストアは消費者との接点を持つ上で有効な手段だ。だが実際に展開するとなると場所や期間によっては費用が1億円を超えることもあるという。事故が起きるリスクもゼロではない。ここではソニーが手がけたポップアップストアの事例を通じ、押さえるべきポイントを学ぶ。

「Life Space Collection」外観の様子。その場で購入した来店者もいた。
"購買"も体験のひとつとして提供する
まずはケーススタディとなる、ソニーのポップアップストア「Life Space Collection(ライフスペースコレクション)」を紹介しよう。同社プロデュースの「インテリアショップ」という位置づけで、東京・原宿の神宮前交差点付近に4月15日から7月2日までの期間限定でオープンした。
「Life Space Collection」では、ソニーの「ポータブル超短焦点プロジェクター」を中心に、円筒型の有機ガラス管を振動させて音を出す「グラスサウンドスピーカー」、ワイヤレススピーカーとLED電球を組み合わせた「LED電球スピーカー」、「4K超短焦点プロジェクター」を紹介する。これらは、「空間を変えることで暮らしに新しい体験を作り出す」とのコンセプトを掲げて開発した製品群。
しかし、「ポータブル超短焦点プロジェクター」ひとつとっても価格は9万円以上。いずれもこれまでにない製品であり、すぐには魅力が伝わらない。そこで、各製品が生活空間をどのように豊かにするのか、理解を促すべく、「Life Space Collection」のオープンに至った。
「Life Space Collection」を担当したのは、電通ライブの関口真一郎氏(クリエーティブユニット第1クリエーティブルーム部長)と、青柳裕士氏(プランナー)。
関口氏は「メーカーであれば、ポップアップストアの展開時にまず明確にしておきたいのが、『商品を売るか、売らないか』。そして『体験に対して代金を設定するか、否か』」と話す。「メーカーの場合、既存チャネルとの関係性もあり、自ら商品を売ることに対して慎重な判断が迫られるのが一般的かと思います。しかし、メーカー側も、消費者がタッチ&トライを通じ、欲しいと思えば、その場で手に入れられるという『体験』を提供したいと感じているのではないかと思います」
「Life Space Collection」も当初は、飲食店として展開し、商品ついては使い方の提案に留める予定だった。しかし、議論を重ね、ソニーの「我々は製品だけを開発しているのではなく、この製品が存在した時のライフスタイルを提案している」という発想から、「もし販売するのであれば、空間まるごと販売したい」というアイデアが飛び出した。そこで商品だけでなく、家具や雑貨なども販売する「インテリアショップ」としてのコンセプトが固まった。
ここでパートナーとしてアクシス(東京・港)が参画。ライフスタイル提案でのコラボレーションとともに、インテリアショップとしての商品販売・運営を担うことになった ...