フジッコ(神戸・中央)は、店頭販促を重視するメーカーの一つだ。同社の「カスピ海ヨーグルト」の販売では、社長自ら店頭に立ち、社員総出で巻き返しを図る施策なども実施。同商品を含むヨーグルト製品全体の2017年3月期の売上高は前年同月比約27%増に。発売から15年が経つ現在もロングランヒットを維持し続けている。
店頭での演出を重視するニッチなファンづくり戦略
健康志向の高まりもあり、ヨーグルト市場は乳酸菌飲料をのぞいて3800億円(2015年)規模に達している。その一翼を担うのが、フジッコの「カスピ海ヨーグルト」だ。乳製品大手が健康機能をうたう新商品を投入するなか、異業種と言えるフジッコが後発ながら15年間のヒットを続けてこられたのは、根強いファンをつかんできたからと言える。
「カスピ海ヨーグルト」を含むデイリー商品(乳製品)グループのブランド責任者である紀井孝之氏は、営業一筋20年の現場主義。店頭での陳列やレイアウト、パッケージの見せ方など、どうすればダイレクトに売り上げに結びつくか、什器選びをはじめとした試行錯誤を繰り返している。同ブランドを託されてからは4年め。誰よりも顧客目線を意識して「販促での仕掛けづくりを考えることが面白くて仕方ない」と話す。
「カスピ海ヨーグルト」は、とろ〜りねばりのある食感と食べやすいマイルドな酸味が特徴。日本にカスピ海のヨーグルトが広まったルーツをたどると、長寿食文化の研究で知られる医学博士の家森幸男氏(武庫川女子大学・国際健康開発研究所長)が、カスピ海と黒海にはさまれた南コーサカス地方には元気に暮らす100歳以上の高齢者が多いことに着目し、ヨーグルトの乳酸菌を持ち帰ったことが始まりだという。
他社の類似製品との大きな違いは、27度前後の常温で発酵(通常は加温する)することや、独特のねばりがあり酸味が少ないこと。ヨーグルトのねばりの正体は、「カスピ海乳酸菌クレモリス菌FC株」が生み出す「粘性多糖類EPS」だ。「このねばりこそ、健康効果の源」と紀井氏は話す。開発当初からヨーグルトの機能に関するエビデンスを地道に集め、学会で発表してきたと言う。こうした経緯から、低価格競争やCMの大量投下に打って出ず、代わりに1000人〜2000人規模のフォーラムを2004年から毎年開催している。
「お客さまに講演やディスカッションなどを通して、直に健康効果を伝える。ニッチなファンづくり戦略を継続してきました。店頭演出も考え方は同様で、どうすればきちんと伝わるコミュニケーションになるかを考えています」そうした戦略が奏功し、2015年には純正種菌の頒布数が500万セットを突破。8年連続、2ケタ伸長をたたき出し、フジッコの主力商品としてのポジションを築いた ...