百貨店では、期間限定のイベントやポップアップストアを随時企画、展開している。流通・小売ならではの企画・集客について、新客獲得をテーマのひとつに掲げる伊勢丹新宿本店の企画スペース「TOKYO解放区」の担当バイヤーである寺澤真理氏に聞いた。

トレンドをけん引した売り場 現在は参加・体験性を強化
伊勢丹新宿本店本館2階フロア中央にある「TOKYO解放区」が開設5年めを迎えた。数週間ごとに企画を入れ替え、売り場に注目を集めるプロモーションスペースだ。西側エスカレーターのそばにあるため、フロアを昇り降りする来店客が目をとめ、回遊の起点となることも珍しくない。「TOKYO解放区」は、開店80周年だった2013年3月のリニューアルを機に設置。
名称は、1994年に立ち上げた「解放区」に由来する。旧「解放区」は、1階フロア中央という"一等地"で、まだ無名の、日本の若いデザイナーなどを積極的に発掘・紹介した。文字どおり文化の発信源として、「ファッションの伊勢丹」の代名詞となった。
「TOKYO解放区」でも新世代ブランドの発信も行うが、それ以上に特徴的なのがアーティストやマンガ・アニメといったコンテンツとのコラボレーションだ。トークイベントやワークショップなど、参加・体験型イベントも企画に合わせて開催する。企画によって、10歳代後半から50歳代までの幅広い世代が売り場を訪れる。
その目論見が当たった企画がある。アニメ・マンガをテーマにしたもので、開催期間中の売上高は、当時までの記録を塗り替えた。
中でも人気を博したのは「写真立て」。写真をプリントする機会が少なくなる中で、一番の目玉となった。「TOKYO解放区」のバイヤーで、企画ディレクションからイベント立案・ブランディング・PRまでを手がける寺澤真理氏はこう話す。
「当時、アニメやマンガファンの方々は、イラストや写真など、ビジュアルものの商品を多くお買い求めになることがわかっていました。ならば、それらを飾る『写真立て』も欲しくなるのではないか、そう考えてご用意しました」
「写真立て」は初日に在庫がなくなるほどの反響。ほかにも、アパレルブランドの別注品や、トートバッグ、タンブラー、ポーチなどのグッズが盛況を見せ、全体の売り上げは想定の2倍以上に達した。
年間約30件の企画を実施 時代の空気を編集して発想
「TOKYO解放区」はこれまでアパレルブランド「PINK HOUSE(ピンクハウス)」や、猫をテーマにした「ネコとファッション by MELANTRICK HEMLIGHET(メラントリック・ヘムライト)」(2014年2月)、など、数々の企画を打ち出してきた ...