一定の経験を積みつつ、まだまだこれからが楽しみな35歳以下の販促キーパーソンにスポットをあてる当連載。第2回はスープストックトーキョー フレンテ明大前店で店長を務める伊橋ゆきさん(27歳)。店長になって1年半、明るい店舗づくりと人材育成に力を注ぐ取り組みを紹介する。
店員とお客さまの関係でも大事なのはお客さまとの絆
「スープストックトーキョー」は、「食べるスープ」をコンセプトにした人気の飲食店。店舗数は駅前や商業施設内を中心に、関東・東海・近畿・九州など全国各地に約60店舗を構える。物販を含む全店合計で売り上げ年間約201万杯(2016年時点)に上る「オマール海老のビスク」は、東京・成田空港の日本航空ファーストクラスラウンジでも提供する。
「フレンテ明大前店」(東京・世田谷)は、京王井の頭線「明大前」駅の駅ビル内にある店舗。ことし2月、伊橋ゆきさん(27歳)が店長に就いた。「最も大きな課題は、人員不足でした」と伊橋さんは振り返る。就任当時、パートナー(アルバイト)は17人いたが、5人が大学卒業とともに退職。さらに伊橋さんはこの5月まで「京王府中店」(東京・府中)の店長も務めており、他店舗などからの助けを得ながら、2つの店鋪を運営する高難度の業務をこなしていた。
「フレンテ明大前店」は人材確保を優先した結果、6月時点のスタッフ数は18人に。しかし伊橋さんは「人数だけでは店鋪運営は安定しない」と話す。知識や経験の蓄積といった「質」の部分も、人材活用の重要な要素だ。
「当店では毎週メニューが変わるなど覚えることも多いんです。知識や経験を積んでいかないと店鋪運営は安定しません。週2回以上は必ず出勤してもらえたらいいのですが、とくに学生は空き時間にシフトを入れる感覚で、週1回~2回という人も少なくありません」
伊橋さんには「パートナーという立場であっても、仕事は空いた時間にお金を稼ぐためだけのものではない」という考えもあったという。
スープストックトーキョーが掲げる企業理念「世の中の体温を上げる」とはどういうことかをパートナーにも考えてもらい、お客さまとの関わりや仕事を通じて今後の糧になるような経験をしてほしい─「そこで、大学4年生のパートナーならば、卒業までの1年で『あなたに会いに来た』という常連のお客さまをつくって、退職時には『さみしいね』と言ってもらえる存在になってほしい、という話をしました」(伊橋さん)
それは以前、伊橋さんが異動する際に、実際に経験したことでもある。
「ある常連のお客さまがいて、会えば必ずごあいさつしていました。異動が決まったことを報告したら、"いままでありがとう"とプレゼントをいただいて。うれしかったし、お客さまとの関係性がしっかり築けていたのだと感動しました」京王府中店ではこうしたエピソードを通して、パートナーそれぞれに「自分なりの目標を持ってほしい」と語りかけるうち、人員が足りないときや急な欠員にも積極的に協力してくれるようになったという。
ゲーム形式の声掛け企画で 店内にも活気が生まれる
「フレンテ明大前店」では、運営が安定するようになってからは毎月連休を取り、旅行もできるようになってきた。
「当社の企業理念である『世の中の体温をあげる』には、お客さまが来店したりスタッフと触れ合ったりすることを通じて、日常を温かくするお手伝いをしたいという思いが込められています。でも、私を含め当の社員は仕事ばかり。休みの日は身体を休めるだけで終わってしまうこともあり、企業理念を体現できていなかった。それが悔しかったということも採用に力を注ぐ理由のひとつです。さらに人員を増やして当店からエリア内に人を輩出していきたいです ...