商品・サービスの差異化が難しくなる中、顧客と長期的に良好な関係を築き、売上を向上する「CRM」の重要性は増している。専門知識が必要な印象の強いCRMだが、何から始めればいいのか。JTBベネフィットは2月、セミナーを開催した。

CRMに高い関心を持つ来場者で会場は満席。
JTBグループが考えるCRMとは
「CRMとは顧客満足・顧客ロイヤルティを通じて、売り上げの拡大と収益性の向上を目指す活動。囲い込みや顧客単価の向上を目指すだけでは成し得ることはできない。注力すべきは、顧客視点に立って満足度を高め、長期的な関係の中で顧客との関係性を向上させること」。ジェイティービー(JTB)旅行事業本部チームマネージャーの町田忠氏は講演でこう強調した。
JTBグループでは、サービスによる「好感体験」を、基本的価値と情緒的価値の二つに分けて捉え、この二つの価値を常に意識し、顧客との関係を向上させることに努めているという。
「基本的価値」とは、顧客が期待し、提供されなければ不満に思うレベルになるもの。「情緒的価値」は、その上の「必ずしも期待してはいないが感じることで好感を覚えるレベル」であり、例えば記憶に残る感動的なサービスは、顧客の特性やTPOに応じるのが定石だ。「基本的価値」と「情緒的価値」を併せて提供しながら、顧客のセグメントに合った対応が重要だと指摘した。
CRMの実践においては、顧客心理の理解・知識やノウハウなど、さまざまな経験が必要になる。それらをパッケージ化して提供しているのが、JTBベネフィットだ。
特別感を演出するCRMソリューション
JTBベネフィットは福利厚生サービスからスタートし、現在はCRM支援やポイントサービスなどを行う企業。人気の福利厚生サービス「えらべる倶楽部」は、設立16年目となる現時点で、会員数約320万人となった。同社はこの「えらべる倶楽部」の好評を受け、法人の顧客向けサービス「CRMえらべる倶楽部」をCRMソリューションとして展開する。「旅行・レジャーから日常に至るまで、ゆとりある快適な生活をサポートすることを目指し、会員が利用できる施設数は約4万。全国のリアルのJTB店舗(約1000店)での旅行の受付、オリジナルイベントの企画などカスタマイズも可能。グループの総合力を活かしたきめ細やかなサービスが強み」と、JTBベネフィット・第三営業部長の青野潤氏は話す。
顧客との関係性を深めるポイントサービス「サンクスコレクト」もCRMで活用されている。顧客に来店時などにポイントを付与し、好きな商品と交換できるというもの。トラベル、生鮮食品、ビューティーなど商品ラインアップは1万4000点以上。16年度中には、国内旅行「エース」と海外旅行「ルック」の旅行商品も加わり、JTBならではの「旅」という体験型商品がますます充実する予定だ。
「サンクスコレクトは
(1)ポイントを貯めるという意欲を継続させる仕組みがある
(2)豊富な商品ラインナップが揃う
(3)低コストでスピーディーな導入が可能
(4)サービスサイトのカスタマイズが自在
(5)利用状況や実績を可視化できる
(6)商品の発注・発送は一括してJTBが行う
といった点が導入企業から評価を得ている」と青野氏。
100年を超える歴史あるJTBグループとして、両事業共に、優良顧客に安心かつ継続したサービスを展開し、法人のCRMをサポートしたい考えだ。
貢献の見える化「CLUB Panasonic」
部門ごとに行っていた顧客サービスを一元化し利便性向上を図りたい。こうした課題から07年にパナソニックが立ち上げた会員サイト「CLUB Panasonic」について、CRM推進部部長の中村愼一氏が講演した。販売への貢献を目的に主軸に置いたのは、
(1)愛用者登録をした人へのアンケートによる商品力強化
(2)コミュニケーションによる継続的関係づくり(宣伝・販促活用)
(3)ネット経由の顧客サービスのワンフェイス化
の3つ。「ファンを集め、育て、良質な顧客へ成長させることに注力し、コンテンツ企画を随時見直すなど、PDCAサイクルを絶えず行い、販売への貢献を見える化してきた。設立当初は『商品開発』、翌年から『商品認知』(顧客とネット上でつながる)、そして13年からは『商品体験』(リアル上でつながる)として、会員限定の体験イベントを開始。15年には『商品購入』(CLUB Panasonicコインというポイントサービスでつながる)へと進化させた」と中村氏。同クラブは総会員数810万人を突破し、日本の企業サイトで最大規模に成長している。
共創できる仕組み「ネスカフェ アンバサダー」
単なるコーヒーメーカーではなく、消費者に新しい価値とコーヒー体験を提供したいと09年カフェマシン「ネスカフェゴールドブレンド バリスタ」を発売し(15年夏には300万台突破)、「ネスカフェアンバサダー」を広げてきたネスレ日本。セミナーでは、Eコマース本部部長の津田匡保氏が登壇した。
少子高齢化と人口減少が進む中、成長機会を家庭外へと移し、11年末からバリスタのオフィス向け無料レンタルをスタート。「おいしいコーヒーと一緒にコミュニティに笑顔を届けたい、という思いを託せる人を『ネスカフェアンバサダー』と命名し、職場(コミュニティ)においしいコーヒーと笑顔を届ける大使の役割をお願いし、継続的にサポートしている」と津田氏。開始2年でアンバサダーは20万件を突破。あらゆるタッチポイントから声を集め、次の開発に活かす。
「本当に望まれるサービスはお客さまと一緒にしか生み出せない。愛されるブランドは、face to face、体験、感動が重要。機能的な価値・メディアコミュニケーションだけでは作れない」と指摘した。

法人のニーズに合わせて、顧客のロイヤルティアップを強力にサポートするJTBベネフィットの青野潤氏。

会員サイトへの集客には「コンテンツ企画力とPDCAが必要」と、パナソニックの中村愼一氏。

アンバサダーとの関係を強化しコミュニティとしての強いつながりを構築しているネスレ日本の津田匡保氏。
「旅のチカラ」=リアル体験をCRMに活かす
パナソニック、ネスレ日本の事例に共通するのは、リアルな体験を顧客と共有することによって、結果的にロイヤルティを高めているという点だ。「体験」か「モノ」かの二択の場合、8割の人が「体験」を選ぶと言われている。「JTBグループの強みである旅のチカラ(=リアルな体験)を、顧客との良好な関係性づくりに活かしてほしい」とJTBベネフィット営業本部長 市川正資氏は、締めくくった。
CRMにこそリアル体験を!
JTBグループでは、法人の顧客のCRMをサポートするため、「リアルな体験」を顧客と共有するさまざまなノウハウを培っている。顧客が「日常生活で使うサービス」や「ポイントサービス」に加えて、法人と顧客のコミュニケーションを深める「イベント」や記憶に残る「旅」による展開など多様な手段を提供して、きめ細かなカスタマイズを行うことで、商品・サービスの差異化につながる法人オリジナルのCRMを支援している。
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