企業から実際に発送されたダイレクトメール(DM)を全国から募り、優れた作品を表彰する「全日本DM大賞」(主催:日本郵便)。第30回は、625点の応募があった。ここでは入賞作の中でも実施効果の高かった作品を紹介する。
金賞 グランプリ
金バッジを送付した100人の“大常連客”は、女将がこれまでの接客の感触をもとに、届いたら喜んでくれそうな人をはじめ、DMをSNSで投稿してくれそうな人、自分が宿泊できなくてもほかのお客を紹介してくれそうな人などを選んだという。
VIPのお客様は同封の〈金の名札〉をつけてお越しくださいDM
広告主/制作者 山代温泉 宝生亭
「山代温泉 宝生亭」(石川・加賀)は、30代の若夫婦が切り盛りする温泉旅館だ。「家族の笑顔に会える宿」と掲げ、4人の子どもを育てる様子をソーシャルメディアや広報誌などで発信している。
親近感あふれる旅館経営や、地道な営業活動の積み重ねで、地元の老人会や農家団体などのシニア層から支持され、リピート客が多い。中には毎月のように宿泊する顧客もいるという。
今回、金賞グランプリを受賞したのは、こうした常連客の中から厳選した100人の“大常連客”に対して、特注で名入れした「金のバッジ」を感謝の印として送付したDM。元々、同旅館の従業員は銀バッジを身に付けており、「この金バッジには、お客さまといっしょに宝生亭をもっと良くしていきたいとの思いを込めた」と、宝生亭の帽子山宗・専務取締役は話す。
開封を促すために、DM本体はバッジで厚みをもたせるとともに、封筒表面にできるだけ送付先顧客一人ひとりの顔写真を印刷した。
送付先の“大常連客”は、女将がこれまでの接客の感触をもとに選んだ。帽子山氏は「こういうDMを面白がってくれる顧客に送付し楽しんでもらうことが、ファンを増やす近道だと考えました」と語る。
結果は、送付した100通のうち84組が1泊2日の宿泊プランを予約するという成果を収めた。「金バッジを付けて行くのは恥ずかしいから、大切に取っておきたい」という声が多い一方で、バッジを自信満々に胸に付けて来て、周囲に自慢する宿泊客もいたという。
「金バッジを付けて泊まりに来るという行動をしてくれたお客さまの数は多くはありませんでしたが、DMをもらった人たちにとっては、自分がVIPと思われているという“特別感”を感じてもらえたようで、当旅館との“忘れられない関係”が築けたと考えています」(帽子山氏)。
宝生亭は、営業担当者がDMの送付先を訪問し、宿泊案件を受注する営業活動も積極的に行っている。担当者が訪れた訪問先の中には、DMを玄関に大切に飾っていた家もあったという。顧客とのつながりを深める手段として、また、営業活動のバックアップとして今後もDMを活用する考えだ。
金バッジの施策とは別に、閑散期にあたる4月の団体客獲得のために地元の得意客向けにDMを実施。閑散期の4月には「4月のヒマな日カレンダー」を送付、うち25%が宿泊予約したという。
銀賞/審査委員特別賞(実施効果部門)
入会者2.2倍! エリア分析から効果を上げた「オープン5カ月記念」タウンプラスDM
広告主 いなげや/制作者 フュージョン
スーパーマーケットのいなげやは、オープン後5カ月経った新店舗でDM施策を行った。目的は近隣住民への認知を高めて来店を促進し、ポイントカードの新規入会者を増やすこと。ターゲットは1.5キロメートル圏内の住民に設定し、近隣限定の特典として会員カード作成費無料券、コーヒー無料券、100ポイントプレゼントの3つを用意した。カード会員入会者数は実施前と比べて2.2倍にアップ。特典の利用率は27.0%となった。
銀賞/日本郵便特別賞(イノベーション部門)
祝・甲子園出場! 試合期間中のユニフォーム洗濯は
野球部まるごとクリーニング屋にお任せくださいDM
広告主 クリーニングBe'/制作者 畠通
全国高校野球選手権大会期間中に球児・監督全員のユニフォームをクリーニングする出張サービスを始めたクリーニングBe'は、同サービスを告知するために、大会出場を決めたすべての学校にDMを送付。4校からの注文を獲得した。ある初出場校は出場決定の翌々日にDMが届き、保護者同士で洗濯のシフトを相談していたところだったので、ベストなタイミングだったとのこと。
日本郵便特別賞(エンゲージメント部門)
2015年暑中お見舞い
広告主 ジェイアール東海髙島屋/制作者 エー・ティ・エー
ジェイアール東海髙島屋の暑中見舞いは、販促的要素を含まず、特別な顧客宛に感謝の気持ちを伝える特別なレター。顧客一人ひとりにあてた手書きのメッセージで特別感を与え、販売員と顧客との信頼関係を深めた。ぬくもり感のあるコミュニケーションの結果、暑中見舞いのお礼を伝えるために来店する顧客も相次いだという。
「第30回全日本DM大賞入賞作品展」開催!
入賞作全25点を展示します。実物を見ることで、その戦略性、クリエイティブ、実施効果が学べます。
日時:開催中〜3月4日(金) 10:00〜18:00
場所:東京都港区東新橋1-7-3 トッパンフォームズビル1階
詳細:ウェブサイト http://www.dm-award.jp/exhibition/
今年、最も人を動かしたダイレクトメールを公開!全入賞作を紹介する『【事例で学ぶ】成功するDMの極意 全日本DM大賞年鑑2016』が宣伝会議より4月1日発売予定。