2015年の訪日外国人旅行者数は1973万7000人、45年ぶりに出国日本人数を超えた。日本を訪れる外国人旅行者への対応が問われる中、壁となるのが言語の問題。多言語対応ソリューションのサービスを利用するのも手だ。


「OMOTENASHI翻訳」は、アプリ「Uni-Voice」をダウンロードし、コードにスマートフォンやタブレットをかざすだけ。アプリはApp Store、Google playから「Uni-Voice」で検索しダウンロード。
通信環境に左右されない多言語ソリューション
訪日外国人客に「旅行中に困ったこと」を尋ねるアンケート調査で、一番多かった回答は「無料公衆無線LAN環境」だった(観光庁調べ)。スマートフォンの普及により外国人観光客の情報収集は以前より容易になり、多言語に対応したサイトも出てきているが、利用するには、通信環境が整っていることが前提となる。都心部では比較的問題はないが、地方の世界遺産エリア内や各観光名所では、まだWi-Fiの整備が進んでいないのが現状─。このような状況でも、Jプロデュースが提供する「OMOTENASHI翻訳」なら通信と言語の問題の対応が可能だ。
約20ミリ四方のコードの中に、日本語約650文字を翻訳した外国語の文章を収納。予めダウンロードしておいたアプリを起動しスマートフォンをかざすだけで、収納した外国語がテキストデータとして画面に表示される。音声アナウンス機能もあり、観光ガイドが手のひらで楽しめる多言語サービスだ。
「OMOTENASHI翻訳」で提供されるコードは、コード自体に文章を収納するので、ネットがつながっていなくても利用できるのが利点。一度読み込んだ文章は保存でき何度でも表示できるので、帰国後に旅の思い出として、SNSで簡単に拡散することもできる。「このコード自体は音声コードUni-Voiceという名称で、ねんきん定期便個人情報帳票や、マイナンバー通知文書に用いられるなど、視覚障害者向けの音声サービスとして既に存在した特許技術。この技術なら、外国人向けにも応用できるのではと考え、翻訳会社と提携し、訪日外国人客向けのビジネスモデルへと加工しました」とJプロデュースの廣瀬勝博執行役員は話す。
JTBグループの総合広告会社である同社は、1951年創業の日本交通事業社を母体に、約60年にわたりマスメディアやイベントに従事し、2010年にJプロデュースとして設立。インバウンド施策に実績があり、大型国際会議やMICEのトータルプロデュースも手がける。宿泊先の手配からイベントの演出、参加者リストの作成までグループで一貫して運営しており、インバウンド分野の知見を活かし「OMOTENASHI翻訳」サービスを開始した。
注文サイトから入力するだけの通販形式
http://honyaku.uni-voice.co.jp/
街中の多言語対応を簡単に低価格で実現
日本各地に点在する世界遺産や指定文化財には、名称や日本語の説明だけが記された看板が多く、景観への配慮や規制、そして予算の点から多言語版の追加設置は困難な状況だ。そういった場所に「OMOTENASHI翻訳」で生成したコードを貼るだけで、多言語化が可能となる。「日本全国の観光地への普及を目的に、できるだけ低価格で提供したいと考え、専用注文サイトから日本語原稿を入力するだけで簡単に注文できる通販形式としました。さらにサーバーを用いないサービスのためランニングコストが不要で、単年度処理ができることが、自治体などからも好評です」。
1コードにつき1〜4言語の翻訳が選択でき、機械翻訳ではなく専門家が翻訳を行う。生成したコードのほか、翻訳テキストとしても納品され二次使用も可能なので、ポスターやパンフレットなどの印刷物、看板やホームページなど媒体ごとに形を変えて活用できる。「私たちはこのサービスをクライアントから直接の依頼だけでなく、広告会社や制作会社、印刷会社などの皆さまにもどんどん活用してほしいと思っています」と廣瀬氏。パンフレットに多言語を表記するにはスペースがないので活用したい、コードを集めるスタンプラリーとして応用したいなど、アイデアによって可能性を広げることができそうだ。大阪府阪南市の観光パンフレットに採用されるなど、徐々に注目が高まっている同サービス。簡単にできる翻訳ソリューションを広めることで、日本が外国人にやさしい国として認知され、ますます訪日を活発化させていくことを目指したい考えだ。

大阪府阪南市の観光パンフレットでも採用
限られたスペースの中でも、英語、簡体字、繁体字、ハングルを収納したコードを付けることで、多言語対応している。ユーザーはアプリを起動し、コードを読み取るだけで翻訳文が読め、自動で音声アナウンスが開始。文章の保存も可能。

「簡単にできる翻訳ソリューションサービスを広げていきたい」とJプロデュースの廣瀬勝博氏。
ほかにも、訪日外国人客向けのサービスが充実

ピリッとした日本を紹介するキュレーションサイト「WASAVideo」(www.wasa-video.jp)。
Jプロデュースでは、外国人へ日本を動画で紹介するキュレーションサイト「WASA Video」も運営。エリア別やキーワード別に動画を検索できる閲覧機能があるほか、会員限定で動画を無料で投稿できる。投稿動画はJプロデュースがチェックし、基準を満たしたもののみをアップ。YouTubeと連動しており、同社では依頼された動画コンテンツを無料でアップし、YouTube アナリティクスを用いて閲覧データを有料で分析。分析結果を用いて効果的な動画コンテンツの編集提案や動画制作を行っている。サイトは企業や団体が行う動画コンテストの投稿受付・公開のシステムとしても利用できる。
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