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ゆとり世代のコンテンツメイカーが今考えていること

「意識高すぎ!高杉くんシリーズ」や「歌手AI VS 人工知能AI」など、テレビCMからSNSで注目を集める企画まで幅広いクリエイティブを手がける電通 明円卓さんと日本最大級の古着コミュニティ「古着女子」やバーチャルモデルエージェント「VIM」など若者から支持を集めるコンテンツを次々に生み出すyutori 創業者 片石貴展さん。異なる業界でコンテンツメイカーとして活躍する2人に、自分たちの世代が抱く思いやこれからの広告について話していただきました。

(左)明円 卓 (右)片石貴展

対立構造ではなく、仲間をつくっていく

明円:僕は片石さんをこの世代のオピニオンリーダーと思っています。まず凄いと思ったのは、会社名を「ゆとり」にしているから、「ゆとり代表」「ゆとり社長」と、僕らの世代を背負って話ができるところです。

片石:ゆとりと名付けたのは自分たちの勝負するマーケットやトレンドに対してある種の逆張りをしようと考えたからです。今でこそ強い思いをもった個人にフォーカスが当たる時代になりましたが、僕が起業したときは、お金を集めて急速に勝負をかける、強者のスタートアップが盛んでした。

明円:逆張りでそうなった、と。

片石:僕のパーソナリティ的にもゆとりという言葉がしっくりくるんです。人に勝ちたい思いもありますが、ネットやSNSで比較されて、数値化されて表層的な価値を比べられるのは大変だから、競争から逃げたい心理があって。そういう世代の価値観、理想を「ゆとり」という名前が強くもっていると思って、この名前にしました。

明円:片石さんのインタビュー記事を読むと「勝ち筋、負け筋」という言葉をよく使っていて、「ここと戦ったら勝てないから違う場所で戦う」という話がありました。しなやかに勝ち抜く場所を考えるのが僕ら世代の特徴で、大きなモンスター企業を倒さなくても自分たちの手の届く範囲からはじめて、スケールしていけばいいんですね。それが純度をもって、やりたいことを大きくしていくための、正攻法だと思いました。

片石:そう思います。起業は本来生業というか、自分の好きなことをやって、ピュアな思いに仲間が共感して、それが10年、20年と、複利で積みあがっていくもの。若手起業家も投資家の言うことを聞きすぎで、もっと起業した思いを語るべきだと思います。

明円:ポリシーをもって、いきなり大きくしない、メンバーもすぐに増やさないなど、なるべく自分たちのやりたい自由が奪われないように意識的に進めているんですね。進め方が今っぽいなと思っていました。

片石:自分は弱い存在と自覚しているから、洗脳や侵略されるのに恐怖があるんでしょうね。資本主義の中でわかりやすい価値を示している人だと、なおさら入ってきやすいという前提が自分の中にあって、ひと回り上の世代はそこと真正面に戦って倒そうとする人が多いですけれど、僕らはそこをするりと軽やかにかわして、自由を獲得するにはどうしたらいいのかを考えます。

明円:この世代のクリエイターの特徴として、敵をつくらずに、味方を増やして進めていくというのがありますよね。arcaの辻愛沙子さんとかもそうだと思います。人を楽しく巻き込む力がすごい。片石さんもインタビューで、「対大人の対立軸をつくると得策じゃないから年上の人に歯向かわない、むしろ褒められたい」と話してましたね。上の世代も巻き込んで、大人の共感を得ながら応援されていくほうがいいと。

片石:そもそも対立の構造は価値観が数種類しかないという前提のもと起きることだと思います。その点、僕らの世代は「自分と全く同じ人はいない」という前提を置いているから対立構造になりづらいですね。

明円:確かに僕らの世代は、ダイバーシティ、多様性を受け入れるのが当たり前だから、何かの価値観を否定することがかっこ悪いと思っちゃうところがありますね。

片石:否定するエネルギーがそもそもないんだと思います。世代に蔓延しているのは諦観というか、ある種のポジティブな諦めです。それに、対立すると記号化してしまって、急速に陳腐になっていくことへの怖さもあります。もっと言うと、自分と同じ人はいない、誰とも繋がってないと心の底で思っているから、対立するのではなく「この人と繋がって寂しさを埋めたい」という思いのほうが強いんですよね。

明円:わかります。世代の特徴ですよね。だから仲間を着実につくっていくし、広げすぎないし、大きく戦わなくていい、という「ゆとり」が生まれるわけですね。

明円 卓(電通)

「意識高すぎ!高杉くん」シリーズ(KDDI)

「復活!ピッカピカの一年生」(小学館)

「AIの登場で一番迷惑しているのは、AIです。」(ユニバーサルミュージック)

「#FOMAREの実験」(ソニー・ミュージックエンタテインメント)

クリエイティブ&プロデュースの時代へ

片石:明円さんに聞きたいのは、この時代にマス広告をつくることは非常に難しいことだと思うのですが、どうやって分散した人たちの点を線に繋いでいくんですか?

明円:それは課題で、「どこまでマスに浸透しているのか」というのは難しいところです。一番簡単な話では出稿量があって、たくさんの媒体を買う力のあるブランドはそれで解決できることもあるけれど、そうじゃない場合に「果たしてSNSで拡散されただけで、マスに届いていると言えるのか」という議論があります。

片石:ジブリの鈴木敏夫さんの本(新潮新書『ジブリの仲間たち』)に「宣伝費=配給収入の法則」と書いてありました。これまではマス広告を打てば、人は面白いと信じるという前提があったけれど、今は視聴者も発信者になっていて、完全なる受信者は存在しません。そこをどう崩すかなのかなと思います。テレビ、チラシ、新聞は、柔らかい堅いでいうと堅いもので、緊張と緩和の緊張としてマス媒体があって、そこをどう気持ちよく緩和していくか、というクリエイティブになっていく気がします …

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