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成果を最大化する仕事の進め方

「広報効果」をどのように測定し説明するか 経営層と現場の意識の一致が鍵に

鈴木恭平(パナソニック コネクト)

現状を評価し改善することは、広報業務を効率化する近道です。一方で効果測定すべき項目は各企業のコミュニケーション課題によって様々。どのように整理していけばよいのでしょうか。

プレスリリースひとつ、記者発表会ひとつ、意義を感じながらも心の片隅で「どう効果測定し、説明するか」を意識しない日はありません。一般的には記事件数や、広告換算値、あるいは想定インプレッションといった数字を使って広報活動の成果を報告していると思います。そしてその成果の示し方に広報担当者自身が疑問を抱くこともあるのではないでしょうか。

広告換算値はインパクトの分かりやすさから重宝され、広報に詳しくない人にも理解を得やすいのかもしれません。しかし、広告そのものもいまだ効果測定に課題を残している現状において、広報活動の成果を「広報は広告の代替」と誤解されかねない指標で評価することは適切だとは思えません。

私は「広報のミッションは企業や社会の課題をコミュニケーションにより解決すること」だと考えています。弁護士をはじめとする士業に従事する方々は、専門スキルを用いてクライアントの課題を解決することで報酬を得ています。広報も士業と同じように課題解決が本来の仕事なのではないでしょうか。

広報だけの課題ではない

PR会社に勤務していたときから広報効果測定の方法を模索してきました。クライアント企業の広報戦略に合わせて、途方もない量の競合記事分析を目視で行い指標化したり、重回帰分析を用いて売上との相関を検証するといった取り組みも行いました。それでも経営への貢献という観点では不足があるように思えてなりませんでした。広報のスキルだけで納得のいく効果測定はできないのではないかと思い、SNSやオウンドメディア運営といったコンテンツマーケティングの領域にも取り組むようになりました。

数年前から、日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構のソーシャルメディア委員会で活動をする中で分かってきたのは、他業種のSNS担当者やマーケティング、宣伝といった広報以外の職種の人もKPI設定や効果測定で似たような課題を感じていたことでした。

議論する中で、経営層の意識と現場の担当者の意識が乖離していることも課題として見えてきました。SNSで投稿すること、広告を出すこと、認知を上げること、すなわち現場で施策を実行することが目的化してしまえば、効果測定もちぐはぐになってしまいます。それは課題を解決するための取り組みとはかけ離れています。

2022年、同委員会では、議論や研究に基づき「企業SNSのためのKPI設定フレームワークVer.1.0」*1を提言しました。

*1 https://dmi.jaa.or.jp/general-browse/view/3464/2

この提言は、SNS担当者の多くが課題認識を持つKPI設定に関して、業界団体の立場からフレームワークを提示し、議論を喚起することを目的としています。フレームワークでは縦軸に商材特性(顧客の購買関与度)、横軸に口コミ(UGC)の量を...

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