活動の集大成とも言える昨年9月の車両公開には、合計108人のメディアが取材に訪れた。運行を祝して沿線地域の人々177人がつくった「Welcome」の人文字も、地域とともにある鉄道の姿として、多くのメディアで紹介された。
昨年、日本初のクルーズトレイン『ななつ星 in 九州』の運行で多くの注目を集めた九州旅客鉄道。首都圏のみならず、海外からも多数のメディアを呼び寄せ、各方面から話題を集めた。時にメディアの間で"ちら見せ戦略"とも評されたように、「ななつ星」に関する発表回数は1年半の間に合計25回にも上り、合計8人の広報室を中心に活動を推し進めてきた。
車両公開、初運行という活動の集大成に向けて広報活動の舵を切ったのは、運行まで残り4カ月というタイミングで、グループ会社である農業生産法人「JR九州ファーム大分」の社長から「広報室長」に抜擢された森勝之氏。「何せ初めての広報配属で、(JR九州の唐池恒二)社長から突然、広報室長を命じられ、まさに寝耳に水の状態。でも、あらためてこれまでの活動を振り返ってみると、やっていることの根本は、畑でニラを育てている時と一緒です」(森氏)。
地域活性の立役者として多くのメディアで紹介されているように、唐池社長の広報センスの良さ・アイデアマンぶりは周知の通り。同社では、行動指針を"いきざま"と言い、全ての活動において「誠実」「成長と進化」「地域を元気に」を"いきざま"として取り組んでいる。「すべての活動が"広報"につながる、広報部だけでなく全社員が広報マンである、というのが社長の考え。現場から本社まで全社員がこれまで地道に取り組んできた結果が、ななつ星に現れたのだと思っています」。