あらゆる施策で求められるのが「効果を測定すること」だが、実際には測定がおざなりになっていることが少なくない。とくにソーシャルメディアなど多様な活用法がある場合は効果を測定しづらく、どんな指標を用いるべきかも議論になる。コムニコでマーケティングチーム マネージャーを務め、SNSエキスパート協会 理事を兼任する本門功一郎氏が解説する。
ソーシャルメディアをプロモーションで利用している担当者の方には、「実際問題、自社にとってどのような効果があるのか?」と悩まれている方も多いことでしょう。一言で「ソーシャルメディアの活用」といっても「公式アカウント」「広告配信」「インフルエンサーの起用」「プレゼントキャンペーン」といったように活用パターンの幅が広く、それぞれ計測すべき値や方法が異なるため、全容を理解することは簡単ではありません。
そこで本記事ではさまざまなソーシャルメディアの活用パターンのうち「ソーシャルメディアアカウントの効果測定」に焦点を当てて、おすすめのステップや、計測方法を紹介したいと思います。
ソーシャルメディアの活用目的から測定すべき値を導き出そう
ソーシャルメディアの担当者は「若いから」「インターネットにくわしいから」という理由で任されるケースも多いのですが、経験の浅い担当者がソーシャルメディアアカウントのKGI(最終的な目標を示す指標)やKPI(目標到達への貢献を示す指標)を決めることは容易ではありません。自社にとって、どんな目的が最適なのかを、上司と部下が一緒に考えましょう。
ソーシャルメディアのアカウントの効果測定を始める前に、「どのような目的でアカウントを活用しているのか」を整理してみましょう。目的が定まっていないと、どの値を計測すべきかも決めることができず、効果測定もできません。下の図1では、ソーシャルメディアの活用における目的(=KGI)と、その目的の達成度合いを表す値(=KPI)を挙げています。

図1 SNSアカウントにおけるKGIとKPI
KGIとKPIは混同されがちですが、違いを理解しておきましょう。KGI(Key Goal Indicator)は「重要目標達成指標」のことでその活動の最終的な目的を意味するものです。一方、KPI(Key peformance Indicator)は「重要業績評価指標」を表し、目的の達成度を間接的に示す中間的な値です。
たとえば、皆さんがとあるレストランの新店舗のマーケティング担当者だったとします。立ち上げ当初ということもあり、お店の名前やメニューを知っている人は多くはないことが予想されます。
このように、これから多くの人に知ってもらいたいという場合は、ソーシャルメディアアカウントを通じて「認知度の向上」を目的にすると良いでしょう。
KGIを「認知度の向上」に設定したら、KPIはファン数やフォロワー数のほか「どれだけの人に見てもらえたのか」を表すリーチ数や、「何回閲覧されたのか」を示すインプレッション数などを計測します。
ほかにも、企業やブランドに対する忠誠心を表す「信頼や愛着の向上」をKGIにする企業も多いです。ライバル企業や店舗との競争が激しくなり、認知度を向上させるだけでは、お店に足を運んでもらいづらくなってきていることなどが、背景にあります。
さて、信頼や愛着の向上をKGIにおいた場合、「エンゲージメント数」または「エンゲージメント率」が主なKPIとして挙げられます。エンゲージメントとは広義では「好意や愛着」を意味します。ソーシャルメディアでは、コメントやシェアなどの反応の総数をエンゲージメント数といい、さらにリーチ数やインプレッション数で割った値をエンゲージメント率と言います。
「いいね!」やコメントをしてくれたということは、そのアカウントの投稿がユーザーに好意的に受け入れられた、と考えらえます。
KPIの値はどう決めたらよいか
「KPIの値はどのように決めたらよいでしょうか?」といった質問を受けることがあります。目標となるファン数やエンゲージメント率をどのように決めるべきか迷った時は、競合他社や、ベンチマークしている企業のソーシャルメディアアカウントの平均値を取ってみるのも良いでしょう。
下の図2は「Instagram(インスタグラム)」で、カフェやファストフードなどの外食系の「Instagram」アカウントをまとめたものです。アカウントによってフォロワー数に差があるため、1000人未満、1000~9999人、1万~9万9999人といったように、ファン数の規模に応じて各KPIの平均値を算出しています …