JR東日本は1月22日、JR品川駅構内の商業施設「エキュート品川」(運営=JR東日本ステーションリテイリング)内で、ネット通販と連動したポップアップストア(期間限定店)2店舗をオープンした。その狙いとは。

JR東日本が「エキュート品川」で開設したポップアップストア2店舗のうち、ひとつはフーディソンが運営する鮮魚小売の「sakana bacca(サカナバッカ)」。オープン期間は1月22日~2月1日で、営業時間は朝10時~夜10時(日曜日・祝日は夜8時30分まで)だった。
もうひとつは女性向けの雑貨を揃えた「iplus(イプラス)」。カウンターワークス(東京・目黒)がセレクトしたネットショップ4ブランドが商品を販売した。こちらの開店期間は1月22日~2月4日で、営業時間は「sakana bacca」と同じだった。
いずれもJR東日本が運営する、駅構内で販売している商品を予約できるショッピングサイト「ネットでエキナカ」と連携した。
「sakana bacca」は鮮魚の事前予約を受け付け、ポップアップストアで受け取れるように。
一方の「iplus」は、店頭で試着した商品の、別カラーや別サイズ、また気に入ったブランドで、店頭になかった商品をオンラインで購入できるようにした。
この企画は、JR東日本が2017年4月からスタートした、オープンイノベーション型のビジネス創造活動「JR東日本スタートアッププログラム」で採択した事業だったという。

──ポップアップストアの手応えはいかがでしたか
佐野太氏:おおむね、よい成果を得られたと思います。オープン期間の1月下旬から2月初頭にかけては、年末年始の商戦を終えたばかりということもあって、売り上げが比較的下がる時期なのですが、とくに「sakana bacca」は、連日最高売上を出すほどの活況でした。
「sakana bacca」が出店した区画だけを見れば、バレンタインデーやホワイトデー商戦にも引けをとらない売り上げの日もありました。
──ヒットの決め手は
佐野氏:珍しい魚が手に入るというマーチャンダイジングの魅力や、メディアに取り上げられて話題になったのが大きかったと考えています。
「sakana bacca」では、一般的なスーパーでは見られないような、旬の珍しい鮮魚を多数揃えていましたし、商品形態も切身やサク、刺身など下ごしらえして提供していました。海鮮丼のようなテイクアウト商品もありましたね。
「エキュート品川」内の飲食ショップ「ぬる燗佐藤 御殿山茶寮」「バル マルシェ コダマ」では、「sakana bacca」とのコラボレーションメニューを用意していたので、そうしたところでも目に付いたのかもしれません。
──ポップアップストアとネット販売との連携もしていました
佐野氏:ポップアップストアとEコマースを連携させることには、大きな可能性を感じています。
もともと、当社で運営しているショッピングサイト「ネットでエキナカ」は、駅構内で販売している商品を予約できるサービスがあります。また、駅を利用したときに見かけた商品を、その場で買わなかったとしても、「あとから買いたい」と思うこともあるでしょうし、「行く前に売っている商品がわかるようになっていれば便利だ」というコンセプトでした。「ネットでエキナカ」は品川駅のようなターミナル駅の個性を生かす効果も見込んでいます。
たとえば出張や旅行などで東京を訪れていて、新幹線に乗る間際に良さそうな商品を見つけても、買わずに帰ってしまうことは少なくない。次にいつ来るかわからない状況では、実店舗だけだと「やっぱり買おう」というアクションを起こせません。ネットでも買えるようにすれば、こうした販売機会の逸失を防げると考えています。
──実際にそうしたニーズがあるのですか
佐野氏:はい。ポップアップストアを「エキュート」に誘致すると、出店期間後に「売っていたものを買いたいが、あの店はどこに移ったのか?」というお問い合わせをいただくことが非常に多いのです。
これまでは顧客サービスの一環として、私たちのほうで調べて、「どこそこの百貨店でオープンしているようです」などと回答していましたが、連携させれば「いまも『ネットでエキナカ』で買えます」と案内できるようになります。
今回出店していた「iplus」は、いまもポップアップストアで陳列していた商品を買えるようにしてあります。
──売り上げの計上先はどのようになっているのでしょうか
佐野氏:「ネットでエキナカ」の売り上げは、店舗に付く仕組みになっています。当初から実店舗の機能を拡張するものとして立ち上げているので。実店舗の店長やスタッフがネット販売を活用しても売り上げが損なわれないとなれば、積極的に使おうという動機づけになります。当社としても賃料対象が増えるのでメリットがあります …