スマホを通じ、生活者にタイミング良く情報を配信し、行動を分析する。こうしたことが技術的には可能になったものの、各ユーザーに最適化した情報を届けられているか、と言えば、試行錯誤が続いているのが現状だ。そこでOtoOマーケティング研究会(協力:宣伝会議、ピーシーフェーズ)では、ビーコンによるプッシュ通知が来店行動にどのような影響を及ぼすかを検証するため、新宿駅にて実証実験を行った。
新宿駅の売店で無料プレゼントが受け取れる
小田急線新宿駅で降車し、改札を通ると、スマホアプリに、近くのお店で無料プレゼントが受け取れるクーポンが届く。駅周辺にある売店に行き、アプリで、プレゼントを「受け取る」ボタンを押して店員に見せると、週替わりプレゼントがもらえる─。これは2015年10月5日~11月15日までにOtoOマーケティング研究会が実施した実証実験の流れだ。
参加したのは、実験用アプリをダウンロードしたモニター。アプリは、小田急エージェンシーとピーシーフェーズが開発し、小田急新宿駅線の改札と売店にビーコンを設置した。
小田急グループが運営する新宿駅周辺の10店舗で5種類のプレゼント(アサヒフードアンドヘルスケア「ハングリーズ」、資生堂「エージープラス クリアシャワーシートN」、日本コカ・コーラ「い・ろ・は・す もも」、カルビー「じゃがりこ GRANDサラダ」、カンロ「ジュレピュレ 佐藤錦さくらんぼ」)が、1週間ごとに受け取れる仕組みだ。
プッシュ通知で一定数が来店課題も明確に
実験の結果、約6割のユーザーが実験前と比較し、アプリ利用中に「小田急線新宿駅付近の売店の利用頻度が向上した」と回答。来店目的については「プレゼント引換のためだけに来店した」人が、「ついで来店」に比べて全週で多くなっており、クーポンのプッシュ通知により一定数の来店が見込めることが分かった。
9割以上が「今後もアプリの利用を検討する・利用してみたい」と回答し、売店でのオペレーションも大きな混乱は見られなかったが、課題も見えてきた。多かったのは「クーポンの受取方法」が分かりづらいという声。またアプリを利用可能にするために「Bluetooth」をオンにする設定や、ダウンロードの煩雑さが、想定以上にハードルとなっていることも分かった。「アプリを使い、売場までの人の流れをデザインしていく上での課題が明確になった。今回の実験フレームは、企業の新しいコミュニケーション手法としても活用できるのでは」と小田急エージェンシー交通広告部長の森田英行氏。「効果を測りにくい交通広告においても、アプリサービスと連動できれば、購買への流れの可視化につながる。今回の実験は交通広告の新たな可能性を探る第一歩となった」と振り返る。
調査では、プレゼントされた商品を認知していない人が、どれだけ来店したのかや、Bluetooth設定に対する意識、プッシュ通知を受け取った場所、拡充してほしいアプリサービスについても集計しており、結果を振り返るセミナーを2月に実施する予定。アプリ、インセンティブ、売場のデザインについて考えを深めたい読者は、参加してみてはいかがだろうか。
実証実験の概要 | |
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実施人数 | 166人(小田急線沿線在住、iOS8.0以上のユーザー、10代~60代以上の男女、学生・会社員・主婦)。 |
実施場所 | 小田急線新宿駅、小田急グループ店舗10店 |
実施期間 | 2015年10月5日~18日、10月26日~11月15日(1週間ごとに受け取れる商品を変更。受取店営業時間は9時~20時) |
OtoOマーケティング研究会セミナーを実施します。
新宿駅で行われたプッシュ通知を使って来店を促す実証実験の結果を振り返ります。アプリ開発を担った小田急エージェンシー、ピーシーフェーズ、プレゼント商品を提供したメーカーら、OtoO マーケティング研究会のメンバーが登壇。
詳細はサイトへ(2月に情報更新予定) https://www.sendenkaigi.com/event/o2o/
お問い合せ/主催:OtoOマーケティング研究会事務局(株式会社宣伝会議内)
Tel.03-3475-7666 E-mail.O2O@sendenkaigi.co.jp