3月30日に開業した複合施設「ミカン下北」。京王井の頭線下北沢駅の高架下を活用してつくられた全長約140メートル、地上5階建ての施設だ。この施設の統合的なプロジェクトを手がけたのはクリエイティブカンパニー Konel。デザイン面はもちろん、交通メディアの開発やテナントのコミュニティの活性化を図っている。

「ミカン下北」のロゴとステートメント。
変わり続ける街を表現
「TSUTAYA BOOK STORE」や居酒屋「下北六角」、図書館カウンターなど個性的な19の施設・店舗から成る「ミカン下北」。Konelは、「働く」と「遊ぶ」を軸に建物の設計やテナントなど前提が固まってきた21年4月頃にプロジェクトに参画した。「複合施設が乱立する今、ハード面だけで差別化・話題化を図るのはなかなか難しいものです。単なる開業というだけでなく、新たな下北沢の顔つきをつくっていくプロジェクトととらえてストーリーを紡ぐことで、より多くの方を巻き込んでいこうと考えました」と代表の出村光世さんは振り返る。
初期の段階でKonelから「東京都実験区下北沢」というコンセプトを提案した。「僕は昔下北沢でバンド活動をしていたこともあり、街の雰囲気が大好きです。新しいもの、発展途上のものに排他的な街もあるなか、下北沢はどんな挑戦でも受け入れてくれるような空気感や土壌があるから、どんな表現をしても『スベる』ことが無い。変わり続けることに前向きで、言い換えれば“実験”が許容されている街と言えるなと」(出村さん)。
「実験区」というキーワードや建築コンセプトにインスピレーションを受け、「変わり続ける」という意味で施設名「未完=ミカン」が導き出された。施設名含め、アウトプットに落とし込んだのはKonel クリエイティブディレクター 足立章太郎さん。これまで下北沢を訪れたことが無かったため、街を1日歩いて目に付いた箇所を写真に撮る「下北採集」をすることから始めたという。
その中で特に注目したのが、古い建物も修復して使い続けている点だ。“リセットするのではなく、上書きする”街の在り方が「実験」「未完」といったコンセプトに重なった。
そこから生まれたのが...