伊藤忠商事は4月、28年ぶりに企業理念を「三方よし」に改訂した。月刊の社内報も刷新し、新たに広報誌『星の商人』を創刊。コンテンツとクオリティにこだわり、社内外のステークホルダーに広く読まれるメディアを目指す。

広報誌『星の商人』の表紙。
鶴瓶さんと岡藤会長CEOが大阪で対談
伊藤忠商事は2020年5月、新たに季刊の広報誌『星の商人』を創刊した。アートディレクターは寄藤文平さんが務め、編集は全日本空輸の機内誌『翼の王国』などを手がけてきたトド・プレスによるもの。全70ページフルカラーで、巻頭を飾るのは笑福亭鶴瓶さんと岡藤正広代表取締役会長CEOによる対談企画だ。関西弁を交えたテンポのいい対談から、2人の人柄が伝わってくるような内容とした。
大阪出身の両名らしく、取材・撮影は梅田のお好み焼き店で行われた。対談の話題も、以前に鶴瓶さんが協力した伊藤忠商事の広告から、芸能とビジネスの共通項、人の心をつかむ秘訣まで幅広い。写真の数々にもこだわり、大阪の街を2人で練り歩く様子や、楽しそうにお好み焼きをつつく表情を見事にとらえている。
「『星の商人』は生活消費分野をビジネスの主軸におく当社だからこそ創れる、誰もが面白いと思える誌面づくりをコンセプトとしています。全世代に愛されている国民的スターである鶴瓶さんに、ぜひ創刊号の巻頭を飾る役割をお願いしたいと思い依頼しました。企業の広報誌の対談企画といえば会議室で行われることが多いですが、今回は“伊藤忠らしさ”を表現するため、大阪のお好み焼き屋さんで楽しく語らう画を撮ろうと決めました」。そう説明するのは、広報誌の発行責任者を務める代表取締役 専務執行役員CAOの小林文彦さんだ。
この対談のインパクトは絶大で、送付先である伊藤忠商事のOBからも多数の反響が寄せられた。岡藤会長CEOは社外取締役を交えた役員会でもこの広報誌について意見を募るなど、全社をあげて力を入れている。配布先はステークホルダー全般。創刊号は社員やOBのほか、採用エントリー層にも配布をしたが、今後はさらに多くの人に読んでもらえるよう配布先を広げる。

巻頭を飾った、笑福亭鶴瓶さんと岡藤正広代表取締役会長CEOによる「お好み焼き対談」。大阪出身の2人が、梅田のお好み焼き店を訪れ語らう。
「また読み返したくなる」広報誌に
この広報誌の前身となるのは、月刊の社内報だ。伊藤忠商事は明治時代(1909年)に社員向けの旬報を発行し、1951年に『CIマンスリー』という社内報を創刊した。のちに『ITOCHU MONTHLY』と改題し毎月発行していた社内報は2019年12月で休刊し、5月の広報誌創刊に至っている。
「今回広報誌を立ち上げたのは社内の出来事のお知らせではなく、社外のステークホルダーにも“面白い”“読みたい”と思っていただけるマーケットイン発想のメディアに切り替えることが狙いです。旧来の社内報は一度読んだら捨ててしまう社員が多かったかもしれませんが、この広報誌は書棚に保管してまた読み返したくなる。その結果、伊藤忠商事という会社のコーポレートブランディングの拡大、浸透にもつながる。そんな存在を目指しています。そのために一流のクリエイターの方々に“伊藤忠らしさ”とは何かをご理解いただき、紙媒体でなければ表現できないコンテンツを生み出すことができました」。
創刊号では鶴瓶さんと岡藤会長CEOの対談のほか...