商品やサービスを通して生活者と直接コミュニケーションをとることが難しいBtoB企業。全ての企業にブランディングが必要ないま、企業の想いをいかにして届けるのか。CI、CSRレポート、店舗の出店など、さまざまな手法で語りかける企業に取材した。
着る人と物語を紡ぐ、相棒のような存在
糸・テキスタイルからアパレルまで、紳士服の一貫生産・販売を行う御幸毛織が2020年4月、CIを刷新した。御幸毛織として設立されてから100周年を迎えた2018年にブランド委員会を発足。タグライン、ファクトブック、ブランドサイトなど各ツールを制作した。
同社は、2017年にオーダースーツの製造販売を行うミユキ販売を、2018年には学生服やユニホームの製造や売糸を行う東洋紡テクノウールを吸収し、事業の幅が広がっている。「当社には、工場で生地づくりをする職人もいれば、百貨店でお客さまに接している販売員もいます。3社が統合したことに加え、BtoBからBtoCまで事業領域が幅広く、社員それぞれで向いている方向が違いました。そこで、会社として目指す方向を明確にしようと、社内にブランド委員会が立ち上がりました」と製品企画グループ長ブランド委員会富山広一さん。
最初に取り組んだのが、ブランドエッセンスの抽出だ。各部門の中心メンバーや社外のステークホルダーなど多くの人に御幸毛織のイメージや強みについて、アンケートを実施した。その回答の中で、共通する項目をまとめ、御幸毛織の“独自性”“機能的価値”“情緒的価値”“ユーザーイメージ”“ブランドパーソナリティ”へと落とし込んだ。そして、生まれたのが、「着る人の物語と愛着を育む、至福の『クラフツ・スーツ』」というブランドエッセンスだ。
「ファストファッションが台頭し、衣服の消費スピードは速くなっています。しかし、御幸毛織のスーツは長く使ってほしい。それは、長年着用しても平気だからとか、品質の部分だけではありません。スーツは、着る人と一緒に年齢を重ね、お客さま一人ひとりと相棒のように共に物語を紡ぐ存在です。御幸毛織はこれからも“いいものを長く使う”という考え方を大切にしたいという想いを込めました」(富山さん)。
お客さまも社員も多くの人が共感できるメッセージ
エッセンスをもとに...