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BtoB企業のパーパスドリブンなメッセージ開発

「お祭り」のような楽しさを表現 クボタのバーチャル展示会「農フェス!」

クボタ

BtoBの重要な接点となる展示会。その多くがコロナ禍で中止となっている。そこでクボタは「バーチャル展示会」を企画。顧客視点のサイト構成や表現とともに、「お祭り」のような賑やかさ、楽しさが伝わる「農フェス!」というネーミングとクリエイティブにこだわった。

トップページ。右上にある「お気に入り」ボタンをクリックすると、ブックマークした機種の一覧を表示、まとめて資料請求ができる。

社内投票で「農フェス!」に決定

クボタは6月16日、農業機械の展示会サイト「農フェス!クボタバーチャル展示会2020」を期間限定でオープンした。新型コロナウイルスの影響で開催が制限されている夏季の展示会の代替手段のひとつとして企画され、8月31日まで公開している。

トップページでは展示会の会場を俯瞰したようなミニチュア風のイラストを用いた。サイト全体で「お祭り」の賑やかさを思わせる、楽しいアットホームな雰囲気を演出している。扱う農機や関連商品は約140種にも及び、7つのカテゴリーに分けてコンテンツを構成した。「130周年アニバーサリー」「稲・麦・大豆」「野菜・果樹」「酪農・畜産」「小物」「営農情報・相談」「動画配信」というコーナーを設けている。

「作物によって扱う機械が異なるため、ユーザーの作業内容やニーズに応じて適切な情報にスムーズにアクセスしてもらえるように枠組みを決めていきました。通常、リアルの展示会では機械やメーカーごとのコーナー配置が多いですが、実物に触れられないバーチャル空間だからこそ、ゼロベースで考え、Webサイトでの最適なコーナー配置を実現しました」と農機国内営業部 営業企画グループ長 能登貴文さんは話す。

サイト自体のクリエイティブや実装は外部の制作会社に依頼しているが、「農フェス!」というキャッチーなネーミングは社内で案を出し合って決めたものだ。

「展示会自体が各地域の農業を活性化させる側面も持っているので、豊作への祈りも伝わるような“お祭り”“フェスティバル”を想起させるネーミングにしたかったんです。ギリギリまで悩み、何度も案を出して社内で投票もしたのですが、やはり短くて呼びやすい名前がいいということで『農フェス!』に決まりました」と営業企画グループ若園真理恵さんは経緯を説明する。

「稲・麦・大豆コーナー」のページ。

のべ10万人超との接点をバーチャルで

企画の始まりは4月。その段階では夏季の展示会が完全中止か、規模縮小となるかなど先々の見通しが立たない状況だった。「ただ、今後もしばらくは対面でのコミュニケーションが制限されるであろうという事態が予測されました。そこでオンラインで代替する手段も必要となるだろう、という判断でした」(能登さん)。

展示会は主に春・夏・秋にそれぞれ開催されるが、特に夏は大型の展示会が多いため商戦の山場となる。その規模は、夏季の主要会場の来場者だけでのべ10万人を超える。その代替手段のひとつとしてバーチャル展示会の実現は必須だった。

とはいえ、6月の開設を目標としていたためとにかく時間が限られていた。しかも営業企画グループはじめ担当メンバーは皆、リモートワークに入っている状態。そこでこのサイトで達成したいゴールを社内で整理し、制作会社に早々にオリエンテーションを実施。実装したい機能や詳細なサイトイメージを提示する形で臨んだ。

クボタとして達成したかったゴールは「一方的な情報発信ではなく、双方向性のあるコミュニケーションができる」こと。なおかつ、扱う農機自体の特長をPRするだけでなく「ユーザーのベネフィットが伝わる顧客視点の見せ方、表現」についても重視した。「その結果、“欲しい” “使ってみたい” 気持ちを醸成したい、というのがポイントでした。あわせて、サイト全体から『クボタは日本の農業の現場を支えていきます』という意志が伝わるように、という点も重要でした」(若園さん)。

近年、デジタル空間でのクボタブランドの向上も課題となっている。コーポレート・コミュニケーション部ブランド推進室長廣瀬文栄さんによると、2016年にはグループ全体でWebサイト群のリニューアルプロジェクトを立ち上げた。「クボタブランドとしての表現に加え、ユーザー視点に立った構造やUI、UX設計を随時進めています。今回も当社としての基本的な方針・ガイドラインにのっとった形での設計・制作を意識しました」(廣瀬さん)。

コーポレート・コミュニケーション部と連携し、「130周年アニバーサリーコーナー」ではクボタのスマート農業の取り組み、AIや電動化技術などが備わった完全無人のコンセプトトラクタなども紹介。会社として描いているビジョンも含め、農業に携わる人たちに知ってもらうことが目的だ。

ベネフィットが伝わる表現に

サイト内にある約140種の商品のうち、クボタの農機以外にも数十社のメーカーの関連商品を扱う。たとえば「稲・麦・大豆」コーナーでは、クボタのトラクタとセットで「耕うん」「代かき」「あぜ塗り」「施肥」といった作業を効率アップできる協力メーカーの機械も紹介している。

バーチャル展示会で他のメーカー商品を扱うか否かはポイントのひとつとなりそうだが、クボタでは「顧客視点」に立った時に必要な情報が揃っている状態にしたいと考えた。「各メーカーにも商品紹介動画を提供してもらうなど、コンテンツづくりに協力してもらっています。訪れた人が商品を比較検討しやすいように紹介ページのフォーマットを統一し、“わかりやすい100文字以内の説明文” “商品特長を説明する画像や動画などの要素は3つまで” といった枠組みを定めて掲載用の素材を収集しました。各機種のスペックを伝える説明文を作成する際も、それぞれお客さまのベネフィットが伝わる表現にこだわりました」と営業企画グループ石原みほしさん。

リアルの展示会と同様に参加者との双方向コミュニケーションを活性化させるため、機種ごとの資料請求や質問がしやすい形としたのも工夫のひとつ。気になった機種をブックマークできる「この商品が気になる」ボタンを実装した。疑問点が生じた場合は、「この商品について質問」というボタンを押すと問い合わせフォームに遷移。質問を送ると後日、クボタから返信が届く。「実際の展示会は興味があるところで立ち止まって質問できるので、それをサイト上でも実現できるようにしました。利便性を考えてなるべく遷移は最小限に、ポイントを絞って情報を見せつつ、気になるところは簡単に問い合わせできる構造としています」と若園さん。

今回は急きょ「バーチャル展示会」を制作したが、コロナ禍では今まで以上にユーザーとの接点としてデジタルコミュニケーションの重要性を痛感している。農業の担い手も若い世代が増えるとともに、対面のセールスだけでなくWeb上での情報収集や製品比較のニーズが高まっていくと考えられるからだ。「まずは8月末までの開設ですが、今後、継続的な開設も検討していきたいです」と能登さんは話している。

クボタ
農機国内営業部
営業企画グループ長
能登貴文さん

クボタ
農機国内営業部
営業企画グループ
若園真理恵さん

クボタ
農機国内営業部
営業企画グループ
石原みほしさん

クボタ
コーポレート・コミュニケーション部
ブランド推進室長
廣瀬文栄さん

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