「1UP」「Vitality」と話題の広告を生み出し続ける住友生命保険は、2014年からTUGBOATと共に広告コミュニケーションを開発している。住友生命保険の藤本宏樹さんは、TUGBOATの麻生哲朗さんとの出会いが同社の広告展開のターニングポイントだったと話す。

(左)藤本宏樹(ふじもと・ひろき)
住友生命保険 ブランドコミュニケーション部 部長。1988年に住友生命保険に入社。三重支社、通産省出向などを経て、2005年に秘書室長、2007年に経営総務室長を務める。その後、2011年の新ブランド戦略立ち上げに携わり、2013年からブランドコミュニケーショ部長として広告宣伝・デジタル・CSR・インナーブランディングなどを担当。10月から企画部担当部長。
(右)麻生哲朗(あそう・てつろう)
TUGBOAT CMプランナー。1996年電通入社。1999年クリエイティブ・エージェンシーTUGBOATを設立。最近の仕事に、大塚製薬 イオンウォーター、NTTドコモ「Style’20」、JRAほか。
クリエイティブに対する考えが変わった
──麻生さんと仕事をするようになって、広告制作に対する考え方や進め方は変わりましたか?
藤本:180度変わりました。それまでは、企業視点で“伝える”ことばかりを考えていました。オリエンテーションも、「当社のブランドビジョンを、このタレントさんを起用して、このメッセージで伝えてください」とやり方を指定する形だったんです。
麻生:でも、最近は商品ローンチのかなり前から、「次に展開する新商品はこういうものです」と話をいただいていますよ。
藤本:以前とは真逆で、結果的に“伝わる”コミュニケーションの相談をしています。受け手目線でメッセージを絞ること。それから、ちょっと笑顔になれる、温かい気持ちになる、新鮮さを感じるなど受け手にとっての価値を大切にしています。
麻生:そもそもTUGBOATに声をかけていただいたのはなぜだったんですか?
藤本:ずっとブランドのイメージを伝えようとしていたのですが、我々が消費者視点に立てていなかったので、伝わらないんです。でもその時は自分たちの考え方が間違っていることを理解してなかった。失敗を繰り返して行き詰まっていた時に、TUGBOATさんにお声がけしました。
麻生:最初のオリエンは、「既存タグラインを発信するか、営業の方たちのコンサルティング力やホスピタリティの訴求か、どちらかの方向で、迷っている」と話されていました。なので、その2方向で案を考えたのですが、同時に、生命保険が「家族のために保険に入る」人の気持ちを描くとしたら、“死”と向き合わなければいけないのではとも感じていました。
どの保険会社も“死”には触れずに、“愛”という言葉でぼかしていたので、業界の通例なのかなと思いつつ、父親が亡くなった家族を描く「Dear my family」を追加案として提案してみたんです。そうしたら藤本さんたちが、「これは住友生命保険の企業理念とぴったり合っています」と。
藤本:「悲しみと共に貧しさが訪れないように」が住友生命保険の伝統理念です。そこに合致していたんです。
麻生:藤本さんたちにとっては、それがかえって新鮮だったのかもしれません。結局、その案も含めて採用してもらうことができました。完成したCMもノンタレントで、有名アーティストの楽曲も使ってない。でもブランドCMとして機能しながら、全体の根底となり、その上に商品CMがあるというレイヤーができました …