神戸市三宮駅のほど近く、神戸港を望む海沿いに立地するデザイン・クリエイティブセンター神戸、通称・KIITO(きいと)。ここでは、神戸に暮らすあらゆる世代の人々が集い、話し合い、行政やNPO、民間企業を巻き込みながら、新しい事業やプログラムを次々と生み出し続けている。
地域を元気にする「土」「水」「風」
神戸三宮にあるデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)では、2012年10月のオープン以来、クリエイティブの力を生かし、将来にわたって神戸の街を元気にしていくことを目指した活動が次々と生み出されている。「大人から子どもまで、神戸に暮らすさまざまな人が交流し、そこで生まれたアイデアによって新しい神戸をつくっていく――KIITOをその拠点にしたい」と副センター長の永田宏和さんは話す。
地域を真に元気にするためには、「風の人」「水の人」「土の人」という三者の存在が不可欠だという。「その地に新しいプログラムや活動といった“種”を運び、刺激を与える『風』。その地に寄り添い、種に水をやり続ける『水』。そこに居続け、活動し続ける『土』。KIITOは『風』であり、必要に応じて『水』の役割も果たしたいと思っています。昔は『土』の人(=地域住民)だけでも豊かな地域社会を維持することができていましたが、コミュニティの希薄化が進むいまは、“種”を外部から持ってこなければなりません。『風』はやがて去りますから、その後も“種”を育てつづけてくれる『水』が必要です。これは中間支援的な存在で、行政やNPOなどが担うことが多いと思います」。
加えて、KIITOの取り組み方には2つのポイントがある。一つは、「不完全プランニング」。“隙”や“余地”のある不完全な状態で企画を持ち込むことで、子どもや大人、学生、NPO、クリエイターなど、さまざまな人が関われる状態をつくる。そうすることで、企画が“皆のもの”になり、その地に定着していく。もう一つが、「+(プラス)クリエイティブ」だ。「地域の人々が参加できる仕組みがあっても、その活動自体が魅力的でなければ、人は集まりません。そこに美しい、楽しい、感動的、非日常といった魅力的な要素があって初めて、興味を持って参加してくれます」。
KIITOでは、「何をするのか」「どんなことを実現できるのか」という、企画そのものを魅力的なものとするために、クリエイティブの力を活用している。「クリエイターの役割というと、デザインやアートなど、目に見える部分だけをイメージしがちですが、企画のコンセプトやシステム、仕組みを考えることにこそ、クリエイティブの力が必要です。地域に既に存在する事業を、これまでとは異なる角度から考え直す視点が重要で、外部のクリエイターが関わる意味がここにあります」。