普段は閉ざされ、一般の人が見る機会は限られている、ものづくりの現場。新潟県三条市・燕市の工場が一斉に扉を開き、ものづくりを体感することができるイベントが開催された。地元の職人を主役にすることで、イベント自体を地域の資産にしていく考えで設計されている。
地元の職人を主役に盛り上げる
新潟県の信濃川流域に位置する燕三条は、目立った観光資源はないものの、金属加工や鍛冶を中心に多種多様なものづくりを行う工場が数多く存在する。そんな燕三条全域を会場に、昨年10月に開催されたイベントが「燕三条 工場(こうば)の祭典」だ。一般の人々にとっては見る機会がほとんどない、ものづくりの現場を公開。職人の手仕事を自由に見て回ったり、ワークショップに参加することができた。「多くの人が完成品しか見たことのないプロダクトの制作工程に触れることで、ものづくりへの興味関心を高めてもらいたいと考えました」と全体監修を手がけたmethodの山田遊さんは話す。イベントには54の工場が参加。見学内容は各工場が独自に考えた。
イベントの企画にあたっては、デザインイベント「DESIGNTIDE TOKYO」の企画運営の経験を生かした。「地域に足りないのはノウハウだけ。そうしたリテラシーさえ身につけば、地域の人々だけでもプロジェクトを進めることができるはず」と山田さん。「重要なのは、地元の方々に自分がメインプレーヤーである意識を持ってもらうこと。そこで、イベント実行委員長を刃物メーカーのタダフサさんに任せ、イベント名やコンセプトもタダフサさんに中心となって考えてもらいました。僕らは3年間で、イベントから離れる予定。それまでにノウハウを伝え切りたいと思います」。