地域をクリエイティブの力で活性化しようとする取り組みは、これまでも全国各地で数多く展開されてきた。地域発のイベントや、地域の伝統文化・技術を生かしたプロダクトブランドの企画開発......そうした活動に、広告クリエイターが参画するケースも多かった。しかし近年は、その地域ならではの魅力を生み出し、育み、その地に暮らす人々の真の幸せを実現しようとする、より長期的な視点に立ったプロジェクトが各地で増えつつある。企業やインフラ、NPOや自治体・行政、そして地域住民。あらゆる人を巻き込みながら、共にその地域の魅力をつくり上げていく。そこに参画することを通して、地域住民に受け入れられるブランドづくりを目指す企業の動きも活発化している。目に見えるクリエイションだけでなく、人や地域と企業をつなぎ、プロジェクトを長期的にドライブさせていくための仕組みやアイデアとは。いま地域で、クリエイティビティが担える役割が大きく広がっている。
2015年に仙台市で開業する地下鉄東西線の新たなプロモーションが発表された。広告クリエイターらが参画し、地下鉄を通じた街づくりに取り組む、異例の開業プロモーションの全貌とその背景にある考えとは。
「地下鉄で市民参加」を実現せよ
「この地下鉄が仙台市の可能性を大きく広げる、素晴らしい交通機関としてデビューできることを願っています」。3月30日、仙台市内で開かれた市民ミーティング。奥山恵美子市長は、集まった300人あまりの市民を前ににこやかに語りかけた。
市民ミーティングのテーマは「東西線がつなげる人とまち」。2015年の仙台市地下鉄開業に向けてスタートする、市民参加型プロモーション「仙台市地下鉄東西線WE」プロジェクトのキックオフイベントだ。プロジェクトのコンセプトやスローガン、ロゴなどが発表されることが事前に告知され、関心を持つ市民らが集まった。
発表会では奥山市長に続いて、GLIDERのクリエイティブディレクター志伯健太郎さんが登壇し、プロジェクトの説明を行った。「多額の公共投資によって生まれる地下鉄だから、沿線住民だけでなく市民全体のものとしたい。今回奥山市長からいただいた課題は『地下鉄で市民参加を実現せよ』でした。この地下鉄のプロモーションを通じて、仙台市全体を楽しくできればと思っています」。