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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

『良い画像や映像』は適切な条件から生まれる

横山 茜氏、松浦 歩氏、金 ヘッブル氏(たきコーポレーション)

    SNS×動画・グラフィックの極意

    ☑「何をどう見せたいか」を明確にする。

    ☑撮り方よりも“撮影環境”が印象を左右する。

    ☑仕上げ(レタッチ)でクオリティが決まる。

今回、SNSで写真や動画を活用する際に大切なことを大きく次の3つに分けました。動画・スチール制作を担うたきコーポレーションFOCUSの3人が、それぞれ解説をしていきます。

ひとつ目は、「撮影のコンセプトや構成を決めること」。この章では、プロのデザイナーが商品撮影の基本的な構成をレクチャーしていきます。

2つ目は、「商品の使用用途に合った撮影環境を決めること」。ここでは、プロのカメラマンが撮影角度や陽の入れ方などをスマホを使って教えます。

3つ目は、「与えたい印象を決めること」です。写真や動画にとって、肝心なのは仕上げ作業。近年では手軽に色味調整できるようになりましたが、加工の種類が多かったり用語が難しかったりします。この章ではプロのレタッチャーが、スマホ(iPhone)に搭載された色味調整機能を使ってレクチャーしていきます。

コンセプトや構成を決める
デザイン/横山氏

撮影において重要なのはコンセプトの設定です。撮影の前に、「何をどう見せたいか」を明確にしておくとスムーズです。例えば自社商品があるとして、その商品の佇まいを見せたいのか、商品が纏う世界観を大事にしたいのか、実際の使用感を伝えたいのかなど、アピールポイントを整理し、優先順位を決めましょう。

この作業があることで最終的に視聴ユーザーにどう見てもらいたいかが定まっていきます。「この商品のココを見て!」をビジュアルで簡潔に言い切ることで、情報が溢れるSNSの中でも目を惹く見栄えになってきます。

コンセプトを決めたら次は構図を考案しましょう。構図とは、レイアウトやトリミングといった画面の構成のこと。これには、冒頭で設定した写真・動画のコンセプトが大きく関わってきます。

例えば使用感を伝えたいのであれば、人と商品を一緒に撮影するのがオススメです。どういう人に使ってほしい(商品のターゲット層)、どういう風に使用する(使用イメージ)、どんな大きさ(人と比較することでサイズ感が分かりやすい)、どんな時に使う(普段使いor特別な時)などの情報も伝わるので、実際に使用した際のイメージを伝えやすくなります。

次は演出。例えば商品の世界観を見せたいのであれば、重要なのは光の設定です。自然光を利用すればやわらかさ、ナチュラルでオーガニックな雰囲気、生命力などを演出することができます。一方で、照明は光量や光源位置の調整により、コントラストを上げてクールな印象にしたり、色付きのホリゾントを使ってポップな印象にしたりと、人工的・工業的な演出が可能です。

さらにプロップス(小道具)を一緒に入れると商品の世界観がグッと深まり、他社との差別化に効果的です。一方で、モデルや小道具を入れず、商品単体で撮影することにもメリットはあります。なるべく商品以外の情報は遮断して商品を象徴的に描くことで、ディテールや存在感がユーザーの印象に残ります。その場合は商品単体を引きで撮影したり、あるいは画面からはみ出るくらい商品の細部に寄ったりして撮影します。そうすることで、画づくりにも緩急が生まれ、印象に残りやすく、外出先での商品想起にも繋がります。

また、SNSの特性を踏まえることも重要です。数多の情報がスピーディーに流れるSNS上で、写真・動画は人の目を引き止める大きなフックになります。アピールポイントを詰め込んだ長い説明文だけでは、情報の渦の中でスキップされることが多いです。ビジュアルがユーザーの目に止まれば、テキストを読んでもらえる確率も高まります。

そこでひとつ大きな指標になるのが「メディアのプラットフォームに沿った画角かどうか」です。スマホで閲覧されることを前提とした場合、横型で撮影すると表示される際に上下に黒の余白が出てしまいます。

視聴する際、スマホを横向きにすれば全画面にできますが、ちょっと手間ですよね。そこで「9:16 or 3:4(縦型)」か「1:1(スクエア)」での撮影を想定しましょう。ユーザー側で操作する手間を省くこともSNS上においては、ユーザーを離脱させない大事な要素となります。

使用用途に適した撮影環境
撮影/松浦氏

前段では、横山が「光の設定は重要」とお話ししました。では光がなぜ重要なのかを実例を出してお伝えいたします。主に室内で撮影をする場合のお話です。普段何気なく過ごしている部屋も、実は色々な色の光が混ざっています。窓から入る光と蛍光灯などの室内の電気は色が違うのです。そのため、その両方がある状態で撮影すると色が混ざり、気持ち悪い雰囲気になってしまうことがよくあります。私がスマホで撮影する際に気にするポイントは2つです。

ひとつ目は、「色々な種類の光が混ざっていないかどうか」。例えば、室内の電気は上から下に降り注ぎ、写真や動画はのっぺりとした印象になります。埋め込みのLEDともなれば何個も天井についていたりするので、影がいろんな方向に入ってしまい、あまり綺麗な写真にはなりません。そんな時は電気を消して太陽の光だけで撮影することをオススメします。肉眼では暗く感じていてもスマホのカメラは優秀なので、適正な明るさで撮ってくれるはずです。

2つ目は、「どんな部屋で撮影するか」。ベストなのは白い部屋です。なぜなら、光は白い物に反射し、部屋全体に明るさがまわりやすいからです。さらに言うと、窓のある白い部屋で撮影するのがオススメです。ちなみにコントラストが強くシャドウが濃いと綺麗な写真に見えないので、日向よりは日陰を意識しましょう。レースのカーテン越しの光など、影が真っ黒にならない場所を探す...

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