消費者のメディア接触や購買行動が変化をすると、消費者に相対するマーケターに求められるスキルも変わるのでしょうか。マーケターとして異なるキャリアを積んできた、ニューバランスジャパン マーケティング部のディレクター、鈴木 健氏とSHIBUYA109エンタテイメントマーケティング部のSHIBUYA109 lab.所長、長田麻衣氏が「メディア環境・消費行動が変化しても、変わらないマーケターのスキルの本質」をテーマに対談します。
本記事はマーケティングテーマ専門イベント「青山 Marketing Collection」のレポートです。
タイパに見る時間をコントロールするという観念
──二人はどのようにキャリアを積んできたのでしょうか。
鈴木:私は1991年に広告代理店の営業としてスタートし、I&S/BBDO、ナイキジャパンを経て2009年にニューバランスに入社しました。ニューバランスではブランドのPRおよび広告宣伝、販促活動全般を手掛けました。2020年からはマーケティング部のディレクターを務めています。
長田:総合マーケティング会社を経て、2017年にSHIBUYA109 エンタテイメントに入社しました。SHIBUYA109 マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround20(15歳~24歳の男女)と接する毎日を過ごしています。
──消費者のメディア接触や購買行動が変化していると言われていますが、具体的にどのような変化に着目していますか。
鈴木:私が注目している言葉は「タイパ」いわゆる「タイムパフォーマンス」です。代表的なものが「映画を早送りして視聴する」ですが、そのこと自体は皆さんも経験があると思います。では私がなぜ注目しているのかというと、何に対して価値を感じるか、という基本的な考え自体が変化していると感じるからです。何かの事象が起きたときには、その背後にある大きな変化まで目を向ける必要がありますよね。
長田:私も昨年以降、「タイパ」の話を聞く機会が増えました。若者への取材では、「倍速」や「スキップ再生」など、「ネタばれしたうえで映画を観る」という話もかなり聞きました。しかし、よく話を聞くと全てに「タイパ」的な行動をしているのではなく、例えば自分の好きな推しの映画は何回も観ながら、よいところをもっと探すという行動を取っています。つまり若者は“深さ”と“浅さ”2つのメリハリをつけるのが上手で、その手段のために倍速を使っているのだと感じました。
またコンテンツが多すぎて情報過多になっているので、一つひとつのコンテンツに丁寧に向き合っている時間がない。即座に自分にとって必要なものか否かを判断しないとさばききれないため、「タイパ」を重視した行動をしているのだと思います。
そういう意味で私は若者の情報処理能力がすごいと感じます。パッと見ただけで「これとこの要素があるから映える」と読み取ることができる。1.5倍速でも同じように内容が入ってくるところを見ると、情報の環境とテクノロジーに適応していると感心します。
鈴木:「時間はコントロールできるもの」という考えがあるのでしょうね。デジタルは再生・実行を繰り返すことができるので、時間が有効かどうか、短くしたい時間・長くしたい時間をコントロールしたいという思いがあるのだと思います。
長田:また、私が感じている購買行動の変化としては、...