立命館アジア太平洋大学(APU。大分・別府)は次世代のグローバルリーダーの育成を掲げ、学生の約半数を外国人留学生が占めるなど、その独自の教育方針から国内外で高い評価を受けてきた。学長であり、ライフネット生命保険の創業者でもある出口治明氏に、今後の大学ビジネスの在り方、さらに進展するグローバリゼーションの中で求められる人材像について話を聞いた。

立命館アジア太平洋大学(APU)
学長
出口治明氏
1948年三重県生まれ。1972年京都大学卒業、同年日本生命に入社、2006年退職。2008年ライフネット生命を開業。社長・会長を10年務める。国際公募で推挙され、2018年1月より現職。同大学初の民間出身の学長となる。主な著書『全世界史(上・下)』(新潮文庫)『人類5000年史(Ⅰ~Ⅲ)』(ちくま新書)など多数。
立命館アジア太平洋大学(APU)
[大学概要]学校法人立命館がアジア太平洋の未来創造に貢献する有為の人材の養成と新たな学問の創造のために設立、2000年に開学した。世界中から集まる国際学生が学生の半数近くを占め、教員も約半数が外国籍という多文化共生キャンパス。APUはAsia Pacific Universityの略。
卒業生や地元の人たちがコロナ禍で困窮する学生を支援
──コロナ禍でデジタルトランスフォーメーションが一気に進むなど、環境が大きく変化した業界の筆頭が大学だったのではないかと思います。学生の約半数を外国人留学生が占める立命館アジア太平洋大学(以下、APU)では、どのような取り組みを行ってきましたか。
まず、2月20日に卒業式と入学式の中止をいち早く発表しました。発表時点では大分県内の感染者は報告されていませんでしたが、APUの学生の約95%は大分県外の日本、および世界各地から集まっており、式には国内外から家族などが大勢駆け付けます。それゆえ、式の開催は感染のリスクが高まると考え、中止の決断をしました。
現在は親元に帰れず、さらにはアルバイトもできずに困窮する留学生に対する支援を重点的に行っています。別府は観光都市なので、学生のアルバイト先の多くがホテルや周辺の飲食店。コロナ禍でアルバイト収入がなくなれば、毎日の食事にも困る学生が出てきます。そこでAPUの卒業生が代表として呼び掛け、教職員や地元の人が賛同する形で、広く資金を募って食料の配布を行っているのです。
──有事の際に関係者が一致団結できるのは、組織としての求心力があってこそ、だと思います。何が求心力になっているのでしょうか。
地域の皆さんに...