緊急事態宣言が解除してもなお、人々の行動は自粛傾向にある。それに伴って変容した消費のパターンは、Afterコロナの時代においても少しずつ変わり続け、元の状態に戻ることは難しいと考えられている。消費者の購買動向について、明治大学政治経済学部の飯田泰之准教授が解説する。
不要不急の「外出」だけでなく不要不急の「消費」も縮小
コロナショックの影響が本格化した4月・5月の家計消費は、それぞれ前年同月比で11%減、16%減となりました(以下データは総務省「家計調査」・全国・2人以上世帯、前年同月比)。企業の投資などに比べて相対的に変化が小さい家計消費がここまで急激に収縮する状況は、このショックの特殊さをよく表しています。また、勤労者世帯の実収入が定額給付金の効果もあって9.8%の増加になっており、給付金は消費増には結び付いていないこともうかがえます。
品目別にみると、各種自粛に関連した支出の低下が顕著です(表1)。鉄道運賃への支出は8割以上減少しています。また、店舗・施設の営業自体が自粛された飲食サービス、遊園地、宿泊に関する支出も多くの品目で9割以上の減少となりました。
一方で移動・営業自粛から直接は影響を受けない品目のなかにも大きく消費が減少しているものが見られます。アパレル関連(被服・履物)では大人物の服への支出が大きく減少しています。子ども服への支出は微増しているのとは対照的な動きです。化粧品については消費減が5月になって加速しました。また、「Stay Home」の状況では増加してもおかしくない書籍への支出ですが、むしろ減少している点も特徴的です。その他、減少品目の多くは選択的な消費──生活のための必需品ではない支出です。
不要不急の「外出」だけではなく、不要不急の「消費」が避けられているというわけです。
選択的消費の多くが「習慣的」 一度やめると元には戻らず
もちろん、緊急事態宣言の解除や勤務体制の復旧などに伴い、各品目とも6月以降、ある程度は消費支出も回復していくことでしょう。しかし不要不急の、選択的消費が一時的であれ大きく減少したことは、今後の各業界、そして日本経済に計り知れないインパクトを与えると考えられます。
選択的な消費の多くは...