緊急事態宣言の発令によって、長期の休業を余儀なくされた百貨店。多岐にわたる商品を取り扱い、また地方や海外の話題の“モノ”“コト”を紹介したりする多様な催事を開催。丁寧な接客に代表される空間の心地良さなど、消費者に「リアルの体験価値」を提供してきた百貨店だが、これからの時代は新たなアプローチの必要性に迫られている。関西圏を中心に阪急百貨店と阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オー リテイリング 代表取締役社長 荒木直也氏に話を聞いた。
オンライン売上が前年比3.5倍増 OMOへの注力を決意
──コロナの影響で阪急百貨店と阪神百貨店は休業していました。休業時はどのような対応をされましたか。
緊急事態宣言を受け、阪急百貨店と阪神百貨店では、食料品売場の時短営業を除いて休業としました。その後、5月16日に大阪府と兵庫県で休業要請が解除されたことから、準備期間を経て、5月21日から営業時間を短縮しての全館営業を再開。
休業期間中、食料品売り場で働く社員は変わらず勤務しなければならない一方で、その他の売り場で働く社員は自宅待機となりました。食料品売り場で感染防止対策を講じるのはもちろんのこと、孤立感を感じやすい自宅待機中の社員のケアも必要。LINEなどのSNSで、職場単位でのコミュニケーションを取るよう伝え、休業中に発信したトップメッセージを共有するよう促しました。今回の経験を機に、スマホでグループ情報を発信する社内報アプリも導入。年4回発行していた紙の社内報は1回程度とし、情報を即座に共有できる体制にしました。
また多くの社員が「大変な思いをして働いている同僚の力になりたい」と志願してくれたため、希望者を食料品売り場や当社グループ内の食品スーパーに応援に派遣しました。
──売上や顧客の消費意識や購買行動に変化はありましたか。
「STAY HOME」が、消費者の意識を変えたことは明らかです。リビング用品や調理用品、ホビー用品の売上が上がるなど、ファッションよりも暮らしの豊かさにお金を掛ける傾向が顕著になっています。
また...