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SNS広報

企業のSNSアカウントを任されたら、押さえておくべき10のこと

企業の認知向上やファンづくりにおいて、SNSの活用が一般的になってきた。しかし漠然と運用するだけでは期待する効果が見られず、場合によっては企業イメージの棄損につながることも。そこで担当者が気を付けるべきポイントを、SNS運用に詳しい有識者5名に聞いた。

国際大学
GLOCOM 客員研究員
小木曽健(おぎそ・けん)氏

複数のITベンチャー勤務を経て現職。SNSリテラシーに関する講演、メディア出演などの実績多数。著書に『炎上しても大丈夫! 今日から使える企業のSNS危機管理マニュアル』(晶文社)など。

ROC
代表取締役 CEO
坂本 翔(さかもと・しょう)氏

23歳でSNSコンサルティング会社を創業。以降、様々な規模・業界のSNS施策を担当し、講演も年50本以上実施。著書に『Instagramでビジネスを変える最強の思考法』(技術評論社)など。

デジタル鑑識研究所
代表
中村健児(なかむら・けんじ)氏

警視庁初のTwitterアカウントを開設し、担当者の個性を出した運用で話題となる。著書に『中の人は駐在さん ツイッター警部が明かすプロモーション術』(翔泳社)がある。

ジソウ
代表取締役
本門功一郎(もとかど・こういちろう)氏

コムニコでSNSの黎明期から大手企業のコンサルティングなどに従事。2016年SNSエキスパート協会を設立し理事就任。2023年ジソウを設立。代表取締役に就任。

セガ
広報部副部長
山田 愛(やまだ・あい)氏

 Twitterセガ公式アカウントを2012年より担当し、フォロワー数は53万超。企業広報に従事しながら、SNSを活用したレピュテーションの向上を目指した企画の立案や硬軟織り交ぜた情報発信を行う。



Q1 【SNSの強みを把握】

SNSだからできる広報活動は何?

A.中の人の人間性が見える、細やかなコミュニケーション

SNSの強みは、双方向型のコミュニケーションで企業の「人間性」を伝えられること。企業サイトなどに掲載する、整った写真や文章だけで生活者の心は動きません。SNSを活用し「こんなユニークな面もあるんだ」などとギャップを楽しんでもらうことが、企業の認知やファン化につながります。

また、Instagramはここ数年、コンテンツが飽和し、投稿内容での差別化が難しくなりました。コミュニケーションこそ、差別化の肝となるため、投稿に寄せられたコメントに「中の人」の人間性が伝わる回答をしたり、ライブ配信中にリアルタイムで答えたりと、ユーザーの反応ありきの運用が求められています(坂本氏)。

A.硬軟織り交ぜた情報の発信 従業員の士気を高める役割も

SNS発信の強みは、硬軟織り交ぜた内容を発信し、会社のことを広く知らせることができる点です。即時性を活かし、時流に沿った自社製品・サービスの紹介や、社内や従業員などのリアルな様子やプロセスなど、まだ完成されていない情報なども伝えることができます。さらに、SNSを使用している従業員も多いことから、副次的に社内広報としても機能。社内の取り組みや従業員の活躍、メディアへの露出情報などがリアルタイムで共有され、従業員のモチベーションの刺激にもつながっています(山田氏)。



Q2 【目的の明確化】

目的はどのように定めるべき?

A.事業の目的や課題と結びつけて議論を

マーケティングの考え方を取り入れるのが一般的です。例えば「認知の獲得」「顧客のリピート化」のように、事業の目的や課題と結びつけて考えるのが良いでしょう。また「採用広報」の場合は「認知拡大」や「エントリー数の増加」などが挙げられます。

ただし事業によっては、SNSの運用だけで態度変容につなげることが難しいものもあります。また、ユーザーによっても態度変容の段階が存在します。SNSだけで目的を達成するのは困難なこともあるため、事業の責任者や採用担当などとともにSNSにおける役割を決め、その上で叶えたいことを定めるのが良いでしょう(本門氏)。

A.目的に合わせ、定量的な目標の策定を

目的は、企業や商品の認知拡大などケースバイケース。目的に合わせ、定量的な目標も定めましょう。公式アカウントの中には、「周囲も開設しているから」と漠然と運用しているものも見られます。しかし、継続的に運用し効果を発揮するには、達成度合いが見えやすい目標の策定が重要です。

定め方はQ7で回答しますが、目標の明確化は何より担当者のやる気を高めることに直結します。特に、投稿内容に「中の人」の人間性を出すと必然的に、ユーザーにその担当者のやる気が伝わるため、目標の達成度合いに合わせてインセンティブを付与するなど、社内の仕組みを整えることをおすすめします(坂本氏)。



Q3 【運用体制の構築】

持続的な運用のための体制づくりとは?

A.最適な担当者選びと専任担当者の設置を

「中の人」の人間性を伝えるコミュニケーション(Q1参照)には、SNSの担当者選びも重要です。最適なのは、自社や自社商品が好きで「その良さを広めたい」という熱意のある人。ユーザーのSNSリテラシーが高まる中、本心ではない投稿はすぐに見透かされてしまうためです。またSNSのみを運用する「専任担当者」の設置も推奨します。

ほかの業務も担っていると、SNSへの工数が割けない時期も想定されますが、継続的に更新しないとフォロワーの離脱につながりますし、SNSとほかのウェブ媒体の運用に必要なスキルも異なります。「炎上」などのリスクを考慮すると、1人でも専任を設けるのがベターです(坂本氏)。

A.「身内の攻撃から中の人を守る体制」構築を

公式アカウントの担当者、“中の人”の悩みは、外からの批判や炎上ばかりではありません。実は組織内で「何かあったらどうする」と批判的な見方をする人による介入や妨害の悩みも多いのです。公式アカウントを効果的に活用しようと考えるなら、「身内の攻撃から中の人を守る体制」づくりが重要です。この構築はそれほど難しいことではなく、組織のトップが「SNS運用はこれが最適」と組織内で宣言すれば良いのです。(中村氏)。



Q4 【運用ルールの策定】

効果を高め、リスクを防ぐために決めておくべきルールは?

A.誤爆を防ぐ仕組みづくりや...

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