企業の認知向上やファンづくりにおいて、SNSの活用が一般的になってきた。しかし漠然と運用するだけでは期待する効果が見られず、場合によっては企業イメージの棄損につながることも。そこで担当者が気を付けるべきポイントを、SNS運用に詳しい有識者5名に聞いた。
Q1 【SNSの強みを把握】
SNSだからできる広報活動は何?
A.中の人の人間性が見える、細やかなコミュニケーション
SNSの強みは、双方向型のコミュニケーションで企業の「人間性」を伝えられること。企業サイトなどに掲載する、整った写真や文章だけで生活者の心は動きません。SNSを活用し「こんなユニークな面もあるんだ」などとギャップを楽しんでもらうことが、企業の認知やファン化につながります。
また、Instagramはここ数年、コンテンツが飽和し、投稿内容での差別化が難しくなりました。コミュニケーションこそ、差別化の肝となるため、投稿に寄せられたコメントに「中の人」の人間性が伝わる回答をしたり、ライブ配信中にリアルタイムで答えたりと、ユーザーの反応ありきの運用が求められています(坂本氏)。
A.硬軟織り交ぜた情報の発信 従業員の士気を高める役割も
SNS発信の強みは、硬軟織り交ぜた内容を発信し、会社のことを広く知らせることができる点です。即時性を活かし、時流に沿った自社製品・サービスの紹介や、社内や従業員などのリアルな様子やプロセスなど、まだ完成されていない情報なども伝えることができます。さらに、SNSを使用している従業員も多いことから、副次的に社内広報としても機能。社内の取り組みや従業員の活躍、メディアへの露出情報などがリアルタイムで共有され、従業員のモチベーションの刺激にもつながっています(山田氏)。
Q2 【目的の明確化】
目的はどのように定めるべき?
A.事業の目的や課題と結びつけて議論を
マーケティングの考え方を取り入れるのが一般的です。例えば「認知の獲得」「顧客のリピート化」のように、事業の目的や課題と結びつけて考えるのが良いでしょう。また「採用広報」の場合は「認知拡大」や「エントリー数の増加」などが挙げられます。
ただし事業によっては、SNSの運用だけで態度変容につなげることが難しいものもあります。また、ユーザーによっても態度変容の段階が存在します。SNSだけで目的を達成するのは困難なこともあるため、事業の責任者や採用担当などとともにSNSにおける役割を決め、その上で叶えたいことを定めるのが良いでしょう(本門氏)。
A.目的に合わせ、定量的な目標の策定を
目的は、企業や商品の認知拡大などケースバイケース。目的に合わせ、定量的な目標も定めましょう。公式アカウントの中には、「周囲も開設しているから」と漠然と運用しているものも見られます。しかし、継続的に運用し効果を発揮するには、達成度合いが見えやすい目標の策定が重要です。
定め方はQ7で回答しますが、目標の明確化は何より担当者のやる気を高めることに直結します。特に、投稿内容に「中の人」の人間性を出すと必然的に、ユーザーにその担当者のやる気が伝わるため、目標の達成度合いに合わせてインセンティブを付与するなど、社内の仕組みを整えることをおすすめします(坂本氏)。
Q3 【運用体制の構築】
持続的な運用のための体制づくりとは?
A.最適な担当者選びと専任担当者の設置を
「中の人」の人間性を伝えるコミュニケーション(Q1参照)には、SNSの担当者選びも重要です。最適なのは、自社や自社商品が好きで「その良さを広めたい」という熱意のある人。ユーザーのSNSリテラシーが高まる中、本心ではない投稿はすぐに見透かされてしまうためです。またSNSのみを運用する「専任担当者」の設置も推奨します。
ほかの業務も担っていると、SNSへの工数が割けない時期も想定されますが、継続的に更新しないとフォロワーの離脱につながりますし、SNSとほかのウェブ媒体の運用に必要なスキルも異なります。「炎上」などのリスクを考慮すると、1人でも専任を設けるのがベターです(坂本氏)。
A.「身内の攻撃から中の人を守る体制」構築を
公式アカウントの担当者、“中の人”の悩みは、外からの批判や炎上ばかりではありません。実は組織内で「何かあったらどうする」と批判的な見方をする人による介入や妨害の悩みも多いのです。公式アカウントを効果的に活用しようと考えるなら、「身内の攻撃から中の人を守る体制」づくりが重要です。この構築はそれほど難しいことではなく、組織のトップが「SNS運用はこれが最適」と組織内で宣言すれば良いのです。(中村氏)。
Q4 【運用ルールの策定】
効果を高め、リスクを防ぐために決めておくべきルールは?
A.誤爆を防ぐ仕組みづくりや...