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REPORT

デザインの力でコミュニティを形成「成功する地域プロジェクト」の条件とは

「地域×デザイン展」レポート

デザインを活用して地域の産業や経済を動かし、コミュニティを形成している地域プロジェクトを紹介する「地域×デザイン」展の第2回が2月に開催された。本イベントから離島関連のプロジェクトや、宮崎県綾町のセッションをレポートする。

「地域×デザイン2017 -まちが魅えるプロジェクト-」は2月3日から26日にかけ東京・六本木で開催され、約1万人が来場した。

2月3日から26日にかけ、東京・六本木で企画展「地域×デザイン2017-まちが魅えるプロジェクト-」(企画運営:日本デザイン振興会、事業構想大学院大学)が開催され、全国から選定した10件の地域プロジェクトが展示されたほか、日ごとにテーマを設定したトークセッションなど57本が展開された。2016年2月に開催され、約1万人が来場した同展の第2弾で、今回はデザインによって地域が持つ価値の転換を図り、魅力に変えたプロジェクトに焦点を当てている。

古民家が島の図書館に

2月18日には「離島」という視点から地域問題を見つめ直すことをテーマとした講演が開催された。長崎県の五島列島を構成する島のひとつである福江島からは、島に文化の交流拠点をつくる「さんごさん」プロジェクトのメンバー5人が登壇した。発起人の鳥巣智行氏と大来優氏、デザイナーの有川智子氏、建築家の能作淳平氏、そして「さんごさん」館長の大島健太氏によるトークセッションが実施された。

「さんごさん」は古民家を改修して2016年8月、五島市富江町にオープンした私設図書館。書棚には島民や著名人から寄贈された「人生の3冊」が並ぶ。元々、移住者である鳥巣氏夫妻には「島に人が集まる拠点がつくりたい」という思いがあり、島のデザイナーであった有川氏が物件を紹介した。建築家の能作氏は鳥巣氏が読んでいた『CasaBRUTUS』(マガジンハウス)に掲載されていたことがきっかけで声をかけられ、プロジェクトに参画することになった。そして大島氏は都会出身だが、大来氏の声かけで前職を離れたタイミングで館長となり移住した。

五島と東京の2拠点から人を巻き込んでオープンしたこの施設は、街の図書館としてだけでなく、宿泊施設や公民館のような役割も担う。「さんごさんはこうあるべきだ」という制約をつくらずに、自由なアイデアで運営されている。能作氏も「建築プロセスも工程やデザインをしっかり決めず、“ゆるく” 進めた。現地の反応を確認しながらつくることで、『さんごさん』のある富江という街らしさが生まれたと思う」と振り返った。

農作物の価値を問い直す

2月21日には、宮崎県綾町の「aya100」の担い手である梶山剛氏(左)と齋藤潤一氏が登壇した。

2月21日には宮崎県綾町で2015年にスタートし、持続可能な地域づくりを目指すプロジェクト「aya100」から担い手である2人が登壇した。「aya100」は宮崎県が主催する次世代経営リーダー育成塾に参加した梶山剛氏が、当時は講師だった齋藤潤一氏の講義から地域ビジネスにおける情報発信などを学んだことがきっかけで発足させた。古くから有機農業の街として知られてきた綾町が後継者不足による衰退に悩まされていたため、その流れに歯止めをかけるべく、デザインの力を活用して町の魅力をウェブや映像、写真で伝えながら野菜の販路を開拓している。

現在、全国で地域プロデューサーとして活動する齋藤氏は、地域ブランドづくりには「ing」が欠かせないと指摘する。「テーマは『1勝99敗』。地域の魅力を発見して磨いて発信するというPDCAサイクルを回し続けることが重要。動きを止めた時点でブランドは廃れていきます」。

綾町の農作物の価値の問い直しは、六本木ヒルズの料理人を招き野菜を食べてもらうことからスタート。その後東京でPRイベントを重ね認知度を高め、2016年4月9日に丸の内で開催した野菜の実食イベントでは5000円で提供したコースに100人以上の応募が集まるまでになった。「歴史や資産を振り返りながら街の価値を問い直し、地域の誇りを大切にし、チャレンジし続ける。そして、最後にデザインで表現する。この流れを間違えてはいけないと思います。その町の魅力を何も知らない外部協力者を呼んだところで、良いものを生むことは難しい。この順序を意識しておくことが非常に重要ではないか」と語った。

その後、梶山氏とともに「地域をリブランディングすることに対する、地元の人々の抵抗感をいかに拭うか」についても議論を展開。梶山氏は「自分たちの動きを止めず、反対する人を巻き込んで応援してもらうまで粘ることが重要。地元の誇りを共有できると良いサイクルが生まれる」と自身の経験から明かした。

2月18日に登壇した福江島(長崎県)の「さんごさん」プロジェクトのメンバー。左から鳥巣智行氏、大来優氏、有川智子氏、能作淳平氏、大島健太氏。

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