名古屋市に本社を置き、40以上の国と地域に生産拠点や販売・サービス拠点を持つブラザー工業。プリンターや複合機など情報通信機器を主力製品としている。海外売上高が全体の約8割を占める現在、国内外におけるPRや情報共有をどのように進めているのか─。
各媒体の特性を把握
家庭用・オフィス用のプリンターや複合機を主軸に、家庭用や工業用のミシン、産業機械やコンテンツサービスなどを扱うブラザー工業。売上比率は米州約33%、欧州約25%、アジア他24%、日本18%と、グローバルに事業を拡大しつつある。通常、国内での製品PRはグループ会社「ブラザー販売」が実施しており、コーポレートPRを担当するブラザー工業の広報との連携も課題のひとつだ。さらに海外拠点に目を向けると、地域ごとのPR体制に差があったり、日本と海外で同社の企業イメージが異なるため一気通貫でのPR戦略をとることが難しかったりと課題も抱えていた。
「まず取り組み始めたのが、国内広報の強化です。具体的にはテレビ・新聞・雑誌の掲載本数の増加を目指し、2012年ごろから月間の掲載目標数を決め、実際に毎月何件掲載されたのかをカウントし始めるようになりました」と、広報を担当するコーポレートコミュニケーション部グループ・マネジャーの出原遠宏氏は語る。
掲載数を増やすため、媒体に合わせた取材提案をするという工夫も。従来は同一の内容を一斉にプレスリリースで発表するだけだったが、どうしても総花的な内容になりがちで、掲載数も伸び悩んでいた。事態を打開しようと、同部のメンバーが記者にヒアリングしたところ、プレスリリースだけでは、独自性を重んじるメディアにとってニュース価値が低く、掲載に至らないか、もしくは扱いが小さくなってしまうと分かった。
これを受け、同社では各メディアがどのようなネタを求めているかを改めてヒアリングし、ニーズに合ったネタを提供。例えば新聞社の場合、地域貢献ネタなら地方紙、柔らかいネタならその手のネタを好む新聞、企業戦略であれば経済紙、技術的な内容であれば専門紙に……、といったように媒体ごとに取材提案の内容に変化を加えていった。その結果、2012年度は175件だったメディア掲載数が、翌2013年度には233件にまで増加。さらに、2014年度には303件と大幅増を果たした。
「載せてもらえなかったときは、会食の場などで『あのネタどうでした?』『どう変えたら響きましたか?』と聞き …