千葉県・いすみ鉄道の立て直しに取り組む鳥塚亮社長。ローカル線と沿線地域をブランド化させるための「ターゲット設定」の考え方とは?
昭和の国鉄型ディーゼルカー「キハ52」といすみ鉄道沿線の風景が醸し出す昭和の国鉄時代の雰囲気は、新たな男性ファンの獲得につながった。
いすみ鉄道は千葉県にある、1両編成の小さな列車が約1時間に1本走る路線です。全員着席できるとして1両ですからせいぜい50人ぐらいしか乗ることができません。つまり1時間に50個の商品供給力ということになります。ピーク時でも最大2両編成ですから商品としては100個しか供給できないことになります。商品供給力がこの程度ということは、これが会社の器ですから、限られた商品をいかに効率よく販売するかということを考えなければなりません。
沿線地域も同じようなもので、観光地化するといっても観光バスが1日に100台も来てしまっては対応することができません。これが地域も含めたビジネスの器の大きさですから、宣伝行為をするにしても自ずと方法は限られてくるというのがローカル線の商売のはずです。
ところが、ローカル線というのは経営が苦しいところばかりですから、できるだけ多くの観光客に来ていただき、乗車していただこうと考えがちなのです。これがよく見かける「安売り」です。ローカル線はある意味で地域を代表している存在ですから、そのローカル線が安売りをしてしまうと地域を安売りすることになってしまうと私は考えています。そうなると、安売りせずにどうしたら良いお客さまに来ていただくかという作戦を立てなければなりません。
運賃で勝負する必要はない
一般的に商品には大きく分けて2つの分類があります。ひとつは「日用品」であり、毎日使う生鮮食料品などがその代表です。もうひとつは「買い回り品」。これは数年に一度買うものや嗜好品などで、耐久消費財や趣味の品物などがこれにあたります。そして消費者の動向をみると、毎日使う「日用品」の最大の購買決定要因は価格で、できるだけ身近なところで買い物をします。一方で「買い回り品」については価格が必ずしも購買決定要因にはならず、自分からわざわざ出かけて行って購入する傾向があります。毎日買う食料品は近くの安いスーパーマーケットで買い、装飾品や趣味の品物などは遠くまで出かけて購入するのが消費者の購買行動なのです。
そこで、ローカル線という商品をもう一度見てみると ...