「フィンテック」「地方創生」「テレワーク」「涼活」─。パッケージソフト開発のインフォテリアでは、注目のキーワードと自社の話題を組み合わせ社会的に最も注目されるタイミングでプレスリリースを発信。取材誘致のチャンスを広げている。

構想段階からコミット
パッケージソフトの開発・販売を手掛けるインフォテリア。昨年12月、フィンテック企業のテックビューロとの提携を発表したことを機に株価が250円台から一時1600円以上にまで急騰。年が明けてからも連日ストップ高が続き、投資家やメディアからも度々注目を集めている企業である。
同社を度々話題化させてきた陰の立役者が2015年4月から広報・IRを担当する長沼史宏氏だ。スピード感のある広報戦略で、メディアが記事にしたいタイミングを逃さず発表。2015年は前年同期と比べ3倍近いメディア露出を稼ぎ、業績好調を後押ししている。
長沼氏は、電子部品メーカーで広報としてのキャリアをスタート。企業再生やM&Aで名高い経営者の直下で広報・IRのイロハを学んだ後、2010年からはファスナーや住宅建材事業を手掛ける大手製造メーカーの広報担当として活躍した。より攻めのPRをしたいと、2015年4月にインフォテリアに入社。入社後、まず課題に感じたのが、同社のリレーションがIT関連のメディアに偏っていたことだった。
「近年当社のソフトを購入する対象者は、企業の情報システム部門の担当者からよりエンドユーザーに近づいてきています。エンジニアだけでなく、もっと一般の方にリーチできるようなメディアにアプローチする必要があると感じました」。
そこで、これまで築いた人脈も活かし、一般メディアにも取り上げられるネタづくりに挑む。まず取り組んだのが、2015年夏にパッケージソフト「ASTERIA」の導入企業が5000社を突破したのを記念したCSR事業だ。活動にあたっては熊本県小国町と提携。間伐材の利用促進を軸とした森林保全活動で、長沼氏が広報の視点で構想段階からイニシアチブを取り進めることで、より社会との接点が強固なプロジェクトとなった。
「当初は植林というアイデアが出ていましたが、調べたところ木材需要の低下の方が深刻な問題だったんです。林業の衰退により人の手が入らなくなった森林が荒廃しているという事実を知り、間伐材利用促進を軸とした今回の事業にたどり着きました。より社会的に課題のあるテーマと結びつけることで、当社としても社会貢献性の意味合いが強まりますし、メディアも記事にしやすい。ネタを売り込むというより、記者の方に森林保全に関する新しい発見をしてほしい、という思いで取り組んでいました」。
9月3日、熊本県小国町役場で実施した記者会見には15のメディアが集まった。記者が駐在する熊本市から車で約2時間かかる場所での開催にもかかわらず、地元記者も驚くほど注目を集める結果となった。
さらに、同年11月26日、三重県伊勢市の皇學館大学でメディア向けの公開ゼミを実施。大学側がインフォテリアのタブレット用アプリ「Handbook」を導入したのを機に、これを使った授業の様子を公開した。
「より身近な場面で活用されている事例を伝えたいというのが狙いでした。大手紙のほか、地元のケーブルテレビなども取材してくれ、狙い通りの結果になりましたね」。
社長とのブレストがヒントに
ヒットが続くPRの多くは、社長とのブレーンストーミングの中で生まれるという。しかし、社長の平野洋一郎氏は現在年間の3分の2を赴任先のシンガポールで過ごしている。どのように連携を図っているのだろうか。
「夜な夜なメッセンジャーを活用して社長とブレストし、話が盛り上がりコンセンサスの取れたものを実現させているというイメージです。ホットラインのような形でやり取りしていますので、特に距離は感じませんね。以前規模の大きい企業に勤務していた際は ...